計画的俺様上司の機密事項

9階の掃除のことは、シンちゃんとわたしの秘密だったのに。

帰ってからきっと問い詰められて怒るだろうなあ。

野上くんもあんなにムキになって声を荒げる必要なんてないはずなんだけど。

その後、シンちゃんは定時になって早々自分の席に戻り、カバンをもってさっさと帰っていった。

二人だけの部署に比較的穏やかな空気が流れていた。

この空間にコーヒーのいい香りが漂ってくる。

野上くんが給湯セットにあったコーヒーを作っていた。


「有沢さん、よかったらどうぞ」


「ありがとう」


紙カップに注がれたコーヒーを手渡された。

野上くんにコーヒーをつくってもらうなんて初めてだ。

いつもなら各自で気兼ねなく飲み物を作って飲んでいたけれど。

野上くんは微笑みながら自分の席に座り、コーヒーをすすっていた。

コーヒーの香りをかぎ、気持ちを落ち着かせて一口飲んでから、野上くんに話しかけた。


「野上くん」


「どうかした? 有沢さん」


「ちょっと、結城部長に言い過ぎじゃないかなって」


「有沢さんのためを思って言ったまでだし」


「わたしのためって」


「強気な態度なのに、どうして雑用について反論しないのかなって。このままだとどんどん押し付けられちゃうよ」


「でも……」


「押し付けられているところ、見てられなくてね。つい、言っちゃった」


さわやかさを前面に出されて野上くんに何も言えなくなった。

野上くんも悪気があっていったわけじゃないし、わたしのことを思ってくれたことには感謝してる。

でも、シンちゃんに食ってかかるのは、優等生な野上くんとは相反していて不自然な態度に驚いてしまったわけだけど。