計画的俺様上司の機密事項

とにかく聞きたいことが山ほどありすぎてわけがわからない。

冷静になって、目の前に立っている男の人を見上げながら、


「あの、助けていただいたのはありがたいんですけど、まず聞きたいことがあるんですけど」


「ん?」


「どうして家にいるんですか?」


「聞いてないのか?」


「は?」


「君のお母さんから」


「へ?」


そういえば、さっきメールを読もうとしていたんだった。



《夏穂》
元気にしてる?
突然なんだけど、シンちゃんて覚えてない?
別の会社から転職したらしいんだけど、部屋が見つからなくて困ってて相談されたの。
だったらうちに泊めてもいいかな、て。
シンちゃんに鍵、預けておきました。
物騒だし、夏穂だけじゃ危ないでしょ?
あとはよろしく頼むわね。
《母より》


「……シンちゃんって」


「ご紹介が遅くなりました。結城真一です。よろしく」


「結城って、え、新しい部長の?」


「そうだけど」


「そうだけど、って呑気なこといってますけど」


「もう忘れちゃったか。さみしいな」


そういって結城さん改めシンちゃんは玄関を抜け、部屋の廊下へと進む。


「ちょ、ちょっと勝手に入らないでくださいよっ」


「お母さまに了解とったんだからいいだろ。空いてる部屋、貸してもらうぞ」


「って、ちょっと」


そういうと、玄関を入って右側、わたしの向かいの部屋へと消えていった。

どうして、今になってわたしの前に現れたの、シンちゃん。

忘れていた心の傷が今になって疼きはじめた。