計画的俺様上司の機密事項

シンちゃんは何にも言わずそのまま会社へ行き、わたしもダイニングに置いてあったピンク色の巾着袋に入ったお弁当箱を手にとると、あとを追うようにでかけた。

会社についてタイムカードがあることにほっと胸をなでおろしタイムカードをタイムレコーダーに差し出し元に戻しているとき、後ろから走ってきたのか、息を整えながら野上くんがやってきた。


「有沢さん、おはよう」


「おはよう、野上くん」


「さっき会社に入ってく有沢さんを見たから急いできたよ」


「え、別に急がなくてもいいのに」


「いいの、いいの」


野上くんは軽く照れ笑いを浮かべていた。

一緒にエレベーターに乗り込むと、二人だけの空間なんだな、と妙に意識してしまう。

それぐらい朝から爽やかなオーラを放っているんだな。

ちらちらと野上くんがわたしに視線を送っているので、沈黙に耐えきれなくて話しかけた。


「……野上くん、昨日は遅くまでありがとう」


「こちらこそ、いつでも言って」


「でも、ホント遅い日もあるし、野上くんだって自分の受け持つ仕事だってあるだろうから。わたしは大丈夫だからね」


「先に帰ってたけど、やっぱり放っておけない。同じ部署だし、同期なんだから気を使うことないって」


「気持ちだけとっておくから」


「無理しないでよ」


野上くんが心配そうに伺ってくれる。

4階に到着してエレベーターのドアが開き、先に降りると、野上くんの大きな手がポンと軽くわたしの肩を叩いた。


「……野上くん」


振り返ると野上くんは黙ってニコっと笑ってくれた。

なんだか恥ずかしくなって先にウェブコンテンツ部のドアを開ける。


「お二人ともおはよう。おーおー、朝から二人仲良くご出勤ですか。うらやましいですなー」


そういってシンちゃんが腕組みしながら席に座っている。

当然わたしに向けての言葉だろうけど。


「おはようございます! ちょうど会っただけですからっ!」

と、つっかかるようにシンちゃんに言い放つと、横にいた野上くんがそれ以上言わないほうがいいよ、という意味で首を振った。

しかたなく自分の席に座り、仕事の準備をはじめると、

「さー、仕事するかなー」

嫌味ったらしくシンちゃんは大きな声でわたしたちにぶつけてきた。