計画的俺様上司の機密事項

部屋の戸締りをして、野上くんと一緒に1階ロビーに向かう。

案の定、タイムカードはちゃんとあるべき場所、野上くんの下に刺さっていたので助かった。

警備員さんに挨拶をして、通用口から外へ出る。

冷たい風がわたしと野上くんの間を通り抜けた。

駅方面へと二人横に並びながら歩いていく。

不思議な感じだ。

夜にこうやって野上くんと一緒に帰るだなんて。

いつもなら、帰りの道は早歩きで家まで向かうんだけど。

ちらりちらりと野上くんがわたしの顔をのぞいてくる。

美しい顔つきにドキっと胸をうってしまう自分がいた。

黙って歩いていたので、恥ずかしくなってわたしから話を切り出した。


「野上くんってすごいね」


「どうして?」


「なんでもできちゃうじゃない。入社してからメキメキと力を発揮してる感じ」


「それを言うなら有沢さんじゃないかな。だって結構社内飛び回ってるし」


「あ、あれはただの雑用だから」


「みんなに慕われるだけでもいい人材だと思うよ」


「そ、そうかな」


「きっと有沢さんを必要としている人は、いるんじゃないか、な……」


「えっ」


「な、なんでもない。冗談だよ」


「必要としてくれる人か」


先輩たちの顔が浮かぶけれど、やっぱりシンちゃんなのかなあ。

いつもそばにいるから、余計にそう思ってしまうのかな。

駅を過ぎたあたりで野上くんも一緒についてきた。


「家まで送るよ」


「だって野上くん、わたしの家からじゃあ、きっと遠回りだし。明日も仕事あるしさ」


「でも……」


万が一シンちゃんが家から飛び出してきたらどう説明していいか迷う。

ここは早めに解散したほうが身のためだ。


「野上くん、ここで失礼するね。今日はありがとう」


「うん。また明日ね。おやすみ」


「お疲れ様。また明日」


振り返ると道の角にずっと野上くんが立ってこちらをみている。

野上くん、どうかしたんだろうか。

週末にも話を聞いてみよう。