計画的俺様上司の機密事項

「彼女、嫌がってるだろ」


資料室にいた男の人だ。

両腰に手を当てて威嚇している。

園田部長の力が抜けたのがわかると、わたしはその男の人の後ろに身をおいた。


「関係ねえよ。引っ込めよ」


「いや、関係あるんだけど」


「なんだよ」


「俺と付き合ってるんだよ」


園田部長は間抜けに口をぽかんと開けて、首をかしげた。


「何いってるんだよ。付き合ってる人いないっていってただろう」


「は? 証拠みせりゃ、いいんだろ?」


ぐいっと資料室にいた男に手を引っ張られた。

反動で腰に手をまわされる。

ぎゅっと抱きしめられ、苦しくなって顔をあげると、資料室にいた男の唇がわたしの唇に触れた。

一瞬のことで、どうしていいかわからなかった。

強引なキスなのに、嫌じゃなかった。

子供の頃、じゃれあってふいに軽く唇が触れた、あの感触を思い出したから。


「夏穂」


園田部長の叫びにも似た声で我に戻った。


「わかんねえのか。もう一回やろうか?」


「……わかったよ」


「もう近づくんじゃねえぞ」


そういうと、弱腰になった園田部長は駆け足で廊下をかけていってしまった。


「あ、あの」


「なんだ」


「もういいんじゃないでしょうか」


「……そうだな」


といって、手を解いた。


「廊下じゃ、ちょっと」


「そうだな」


といって、ドアを開け、玄関に入ると資料室にいた男も一緒に入ってきた。