夢をみた。

シンちゃんとわたしが小さい頃に戻った夢だ。

シンちゃんと仲良く遊んでいるところで、シンちゃんと同い年の女の子がやってきた。

しばらくしてシンちゃんがいなくなって、その女の子からシンちゃんが待っているっていう公園へと目指した。

そこは自分の体よりも大きくて真っ暗な場所だった。

気がつけばその真っ暗な場所へと落ちていく。

場面が切り替わり、シンちゃんがわたしのことで涙している。

どうして? だって、シンちゃんがここだっていってくれたんだよね。

どうして、シンちゃん、別の街へ暮らさないといけないの?

ねえ、どうして、わたしを置いていっちゃうの?

ねえ、いかないでよ。


「おい、夏穂、どうした。泣いてる」


「え」


気がつけば朝になっていた。

そこにはシンちゃんがいつもの通り、エプロン姿で立っている。

両頬からこぼれ落ちた涙を拭い起き上がってベッドの縁に腰掛けた。


「起こしにいったら泣いてるからびっくりした。変な夢でもみたか?」


「……シンちゃんとの昔のこと」


「で、どんな内容だった」


「暗い場所にいた」


シンちゃんはピリッと珍しく目尻を立てる。


「それ以上のことは?」


「出てきてない」


「大丈夫。オレが付いているから」


そういってぎゅっと抱きしめてくれた。

今までよりもきつく抱きしめてくれたのはなんだろう。


「安心しろ。オレがついてるから、な」


「う、うん。それより苦しいって」


「ああ、悪かったな。夏穂が可愛くってな、ついつい。寝起きの夏穂を朝からがっしり抱きしめられるなんて幸せだなーって」


「だから、そういうことは言わないでってばっ!」


がははは、とシンちゃんは笑うと、抱きしめるのをやめて、朝飯できてるから食いに来いよ、といって部屋を出ていってしまった。

まったくシンちゃんは油断も隙もないんだから、と嘆いて、顔を洗いに洗面所へ行った。

顔を洗いながら思う。

こんな夢をみたのは、シンちゃんが引っ越してわたしの前から離れたとき以来だった。