時間を掛けて食べ終えて、作ってくれたお礼にと、洗い物を勝手出た。
『主任はどうしてナポリタンが好きなんですか?』
『手軽、すぐできる、食べるのに時間が掛からない。この三拍子?』
『…聞かなければよかったです』
食器に残った洗剤を洗い流しながら、聞いたことを少し後悔した。彼らしい、もっと違ったエピソードがあるのかと思っていたからだ。
『あはは。ケチャップとかソースとか、好きなんだよ。だからオムライスも頻度は多いかも』
『それなら私も気持ちは分かります。オムライスはデミグラスソースより、ケチャップがいいです。だから、なぽりのオムライスは好きです』
『あそこは昔、ナポリタンしか出してなかったんだって』
洗い物を終え振り向くと、彼はソファーの背もたれから上体を乗り出して、こちらを見上げていた。あまりにも興奮していたから私は意地悪を言ってみたくなった。
『それでなぽりって名前なんですね。ナポリタンも美味しいです。でも、毎日はいいです』
『何だよ。随分、そこだけ強調するよな』
『主任のナポリタン好きは伝わりました。これからはナポリタンを侮辱しないようにします』
『…全然伝わってないじゃん』
そっぽを向いてふてくされた様子を見せた彼の隣に戻り、顔をのぞき込むと悪戯な笑みを浮かべていた。
『主任は休みの日はどう過ごしてるんですか?』
『ダラダラ勉強。結果はまだだけど試験も終わったし、今はぼーっとしてる。次は施工管理技師の勉強』
一級建築士を取ってしまえば、一級施工管理技師は実務だけ。建築士を諦めて施工管理技師を取る人もいる。だからって一級施工管理技師が簡単なわけじゃない。
資格取得は、仕事をしながらそれを目指すということがどのくらい大変なのか、先輩方の話しを聞いて知った。何年もかかる人。一発合格する人。そして、諦める人。仕事が忙しくなり結婚して子供が産まれて、断念する場合もある。と。
『ま、一級が受かったらの話だけど』
『…絶対、受かりますよ!』
浮かない表情をする彼に、私は両手を握り『ちゃんと祈りましたから』と、目を瞑る。
『じゃあ、その祈りが届くように俺も祈るよ』
『えー…、祈りに祈るなんて聞いたことないです』
瞼を閉じたままそう答えると、『念には念を』と笑い声を落とす。



