瞼が痛くて目が覚めた。起きたってことは眠ったってことだ。一体いつ寝たのか全く思い出せなかった。頭の下にあるはずの枕が少し硬かった。
『ん…』
薄目を開けると知らない部屋の天井が映し出された。背中に当たる感触はベッドマットレスのようで、少し身じろいだだけでスプリングが効いて体が跳ねる。きちんと掛け布団を被っていた。
微かに柑橘系の香りがした。
温もりを感じる右側に目をやれば、寝息を立てる彼が眠っていた。私に腕枕をして。
どう見てもおかしな状況だった。でも、不思議と嫌ではなかった。
昨晩のことが、頭の中で渦を巻くようにぐるぐると回転する。
そうだ。
泣いて抱きついたまま、安心して眠ってしまったんだ。
彼の寝顔はあどけなくて、会社で見せる彼とは違う彼がそのまま眠っていた。物珍しそうにまじまじ見入っていたら、体を捩らせた。
『…ん、柏木、起きた…?』
掠れた声が寝起きを物語る。私が落ち着かないでいるから起きてしまったようだ。
『主任、おはようございます…』
『おはよ。…寝れた?』
『はい…、主任。寝起きいいですね』
『ん、これがいつもだから、いいかわかんない。まだ5時か、二度寝するか起きるか…』
壁に掛けられた時計に目を合わせて、布団を被る。その様子はもう少し寝ていたいのだろう。
『いつもはどうしますか?』
『うだうだして、悩んで悩んで寝る』
『ぷっ、…悩んで寝るんですか?』
思わず吹き出してしまった。
『…やっと笑ったな? 昨日は笑うどころじゃなかったから。…瞼腫れてる』
布団から顔を出し、切ない表情を向ける。



