それから1ヶ月以上が経った、9月初旬。
島野さんのデスクに人の輪ができる。迷惑そうにマウスとキーボードを操作する。
『…何だって俺が調べなきゃならないんだ、自分たちで見ろよ。受験番号っと…』
『どうしよ…。面接より緊張する…』
二人が受けた学科試験の合格発表の日。目を瞑って、両手を合わせ祈っているのは私だけだった。
『何で、お前が緊張するんだ。柏木! 祈ったってすでに結果は出てるんだぞ』
『…え?』
ぎゅっと閉じた瞳を開けると、その場にいた全員が呆れた顔で私の様子を伺っていた。
『あははっ。まあ、祈ってくれるのは柏木だけだよ』
隣で向けられた彼の笑顔でも、合わせた手と手が離れないでいるように、それでも緊張が解けなくてまた目を閉じた。
『えーと、…日下は合格。工藤は…、あれ? ないな…? 工藤の番号は…』
ぶつぶつ手間取る島野さんに、祈りながら私はもやもやしていた。
早く、早くと。待っても続きがなかなか下りてこなく痺れを切らす。
『島野係長…。まだ、ですか…?』
『だから、何でお前が急かすんだよ』
『だって…』
『おかしいな…、工藤の番号だけないな…』
『え…、ちゃんと探してくださいっ』
『だから、何でお前が泣きそうになってんだ?』
島野さんの声が届いてすぐ、みんなの笑い声がした。
『どうして、みんな笑ってるんですか…?』
『何をいちいち必死になってんだ、お前は』
どうしてこんな緊張する場面で、みんなが笑っているのか分からなくて声を投げるも、目を開ける勇気がなかった。



