優しい胸に抱かれて


気が抜けて首を垂らしていると、近寄ってきた彼が結果を心配するような声を落とす。

『柏木? 大丈夫だったか?』

『工藤主任…。はい、大丈夫だったと思います。けど…』

大丈夫だったのは書類が間に合ったことで、企画書がいらなかったのは大丈夫ではないのではないか。不安だった私は顔に出してしまっていたようで。

『けど? 何か不安なことでもあるのか?』

私の机に手を付いて、顔を覗かせる彼の目は教えろと訴えていた。


『はい。あの企画書はボツになったと、聞いてないのか。って』

腕を組んで怪訝な表情を落とす彼に、怖々と声を振り絞る。

『誰からあの企画書をコピーするように言われた?』

『一課の森田課長です。大事な企画書だからと』

『…柏木? このことは誰にも言うなよ』

『でも、主任…』

前川さんのあの表情を思い返して、私は悪いことをしてしまったのかもしれないと、罪悪感でいっぱいだった。そんな考えを察してくれたのか、彼は笑顔を作り、不安そうに眉を下げた私に笑いかけた。

『大丈夫だよ、心配しなくても』

『工藤主任が大丈夫というなら、大丈夫ですね』

視線を向けると優しく微笑んでいて、本当に大丈夫な様な気がしてきた。

後になってよくよく考えれば、誰にも言うなと口止めをされたのには理由がきちんとあったのに、くしゃくしゃに作った彼の偽りの笑顔を見抜けずにいた。