優しい胸に抱かれて

上品で高級感たっぷり、真紅の布が敷かれた螺旋状の階段に整列させられた。歓声が沸き上がり、上から花嫁と花婿がゆっくりと下りてくる。

緊張が解けたのか、嬉しそうに笑いながらみんなに「おめでとー!」と、祝福されて。

隣に目を向ければ、やっぱり泣いていて。少し離れた位置で待機している佐々木さんも、泣いている。

どうしようもねぇな。と、心の中で呟いた時。


俺の前で止まる工藤と柏木の2人は、にやっと厭らしい笑みを口元に浮かべた。


「何だよ?」

顔を顰め、静止した見慣れない姿の2人を見やる。


柏木は手に抱えていたものを、工藤も緑の物体を押し付けた。

「日下さん、渚をよろしく」

「俺の実家から産地直送」

わけのわからない台詞を置き捨て、可笑しそうに笑い声を立て俺の前を通過していった。


渡されたものが何かを覗き込む。俺は言葉を失った。

手の中には、女の子なら誰もが喜びそうな柔らかな色合いでまとまったブーケ。そして。

「…とうもろこし?ブロッコリーブーケとか聞いたことあるけど、とうもろこしブーケって、面白いね?」

と、隣にいた彼女はその二つを覗き込み、本物だねって。


「とうもろこしの時期は過ぎてるのに、わざわざ調整してくれたのかな?」


って、どうでもいいし。そんな呑気な事態じゃねぇんだけど?

序盤で、ブーケを他人にくれてやってどうすんだよ。


ほらな。少し離れたところで、馬鹿にした複数の高笑いが聞こえてきた。そこに吉平まで加わっているのだから、小気味が悪い。


深い意味はないと念を押し、花と草の匂いがする緑の物体を預けた。表情のトーンが落ちたのは気づかないフリをした。


仕打ちはこれで終わらず、祝辞のスピーチを頼まれていた部長は俺のところへ来て、お前がやれと投げて寄越した。

佐々木さんの結婚式で、島野さんへ丸投げした部長が、工藤たちの式ではどう出るのか全員がハラハラし、誰に降りかかるのか楽しみでもあった。

当然、佐々木さんだと思っていたし、実際、佐々木さんが適任なはずだった。