優しい胸に抱かれて

 二枚貝並みの口の硬さを見せつけ、両手を合わせて謝るよっしーに「他に内緒にしてることない?」と、詰め寄った。

 よっしーまで一枚噛んでいたなんて思いもせず、私が向けた視線は殊の外冷たいものとなった。


「ごめーん。でも、倉光さんだっけ? その人のことはあの人に言うなって釘刺されたのよねー」

 と、けろっと笑ったよっしーが指し示した方を見る。私たちを一瞥し、眠そうに瞳を平たくさせ不機嫌そうに日下さんが素通りして行った。


「よっしー、ごめん。またあとで」

 よっしーに別れを告げ、即座に日下さんを追いかけ真横に並んだ私に、嫌そうな視線をくれた。

「日下さん、おはようございます。旭川、お疲れさまでした。あと、色々と、その…、すみませんでした。それと、ありがとうございました」

「色々うるせぇ。お前のせいで旭川の帰り、島野さんがずっと動画見て笑ってたじゃねぇかよ。何の謝罪だ? 俺に肘打ちしたことか?」

 あの動画は帰りの道中で送りつけてきたものだったんだ。日下さんが運転している横で、馬鹿にしたように笑う島野さんの姿がイメージできる。


「色々です、それも込みの謝罪です」

「月曜の、しかも朝一に、見知った顔を目に入れたのがお前じゃやる気起きねぇな。着いてくんじゃねぇよ」

「行き先は同じなんですけど…」

「じゃあ、並ぶんじゃねぇよ。お守りの分で、チャラだ。…良かったな、お前をきちんと見てくれる奴で」

「はい。…日下さんをきちんと見てくれる人、見つかるといいですね」

「うるせぇよ」

 肩に鞄を引っ掛け、しれっと歩いて行った。予想通りの返しに、思わず笑みが漏れる。