優しい胸に抱かれて


 週明けの月曜日。明日の天気が雪とは考えられないくらい快晴で、この時期には珍しく気温は20℃まで上がるらしい。雲一つない冴え渡る、抜けるような青空。

「紗希ーっ、おはよ!」

「よっしー、おはよ」

「もう体調いいの? あれ、一緒じゃないの?」

 よっしーは私の左手を持ち上げ、薬指の指輪を指した。


「ん。車、置きに行った」

「ふーん、…紗希から男の匂いがする」

 私の左手からよっしーの手は髪に移動し指に巻きつけると、自分の鼻に押し付けた。

「そんなんじゃないって…」

 と、弄られた毛先を整え焦って否定する私に、にっ、と唇を反り返し意味あり気に笑う。


「うーそ、冗談。あの人、紗希のこと大事に想ってるのが全身に滲み出てるんだよねー。悔しいけど。…黙ってて、ごめんね?」

「うん、いいよ。なんかね、嬉しい。上手く言えないけど…、あの当時の私より、未来の私を優先してくれたってことでしょ? そう考えたら、嬉しいなあって」

 あの人とは紘平のことでその気持ちを知っていて、敢えて私に教えなかったことを申し訳なさそうに謝るよっしーの気持ちがくすぐったい。そんな嬉しさに動かされて頬を緩ませた。


「実はね…」


 倉光さんが元、店舗デザイン事業部だってことを知っていて黙っていたと、言いにくそうに顔を歪めた。


 それもそのはず、総務課のよっしーが知らないわけがない。


 内々に綿密な計画を立てたわけではないのに、計算されたかのような抜群のチームワークを発揮したのだ。口止めされていた背景を知った今となっては、様々な思惑と感情と偶然が交差しただけの秘め事に、ただただ賞賛するばかり。


 何にも知らないで、みんなの掌で軽く転がされていたなんて間抜け過ぎる。