優しい胸に抱かれて

 最後っていうのが、私たちが人目を盗んでキスしているところとか、日下さんから受け取った私が食べ残したおにぎりを、紘平が口に入れたところまでだったりするから、島野さんのやり口にあんぐりしてしまう。

 あのおにぎりの欠片を、食べてくれたのは知らなかったのだけれど。また最初から再生を始めたのには茫然自失した。

 私がおにぎり相手に不満そうにしているところから始まっていた。にしても、そんなに真剣に見ることないのに。


 徹頭徹尾真剣な表情を貫いた紘平は「…もっと他にやり方はあったはずなのに」と、重く呟いた。でも直ちに撤回した。

「俺が言う台詞じゃないか」

 そう笑ったかと思えば、急に眉根を険しくさせた。


「この2人も最初は机を並べていたわけだろ? 俺らみたいにさ。本人の意に反してたかどうかはわからない。でも商品部に異動になっても同じことの繰り返し。島野さんを羨んでいただろうし、憎く思ったことだってきっとあると思うんだ。森田さんのことがなければ、今も机を並べてたかもしれないんだ」

「うん…。だけど、この人。島野さんに敵意はないように見える…」

「島野さんが課長になるこの時期を狙ったのかもって、分かり易い手口使うあたり、島野さんに暴いてもらいたかったように見える。きっと、島野さんもそれわかってて乗ったんだろ。この動画やレコーダーも証拠として突き出す気ないだろうし、あとは本人に委ねるんじゃないか? 誰も悪くないよな…、なんだかやりきれない」

「私、平っちが同期でよかった。合コンにしか興味ないから、敵意とかないから恨むことないし。平っちはどうかな…?」

「紗希、大丈夫だよ。能天気としか思われてないみたいだから…。痛っ」

 その瞬間、私の作った握り拳は紘平の膝に振り落とされた。

「ひどいっ…」

「あはは。そうやって平を恨むことになるかもな?」

 紘平は笑って、眉を寄せた私の手を取り絡ませる。柔らかく微笑んで「元気になってよかった」と、眉と眉の間にキスをした。