優しい胸に抱かれて

『…決心して別れようって言ったのに、後悔した。言ったそばから後悔して、何度取り消そうとしたか…。今なら追いかければ間に合うって、紗希が車降りた後もずっと未練が残って。なかなか電気が点かない紗希の部屋見てた』

『…え? だって…、車。なかったよ?』

『部長に呼び出されてさ…、でも、1時間くらいはいたよ。早く電気点けろって見てた。泣いてるんだろうなって思って、見てた。紗希が下りてこないか見てた。来るわけないかって、未練と戦ってた』

『私は、外に車がないのを見て、もう必要ないんだって思った』

『…ごめん』

『…部長の、話し。森田さんとの間に何があったのか、…知ってたの?』

『聞いてはいた』

『紘平の言う通り淋しい思い…、してたと思う。1人で泣いてたと思う。繋がっていても、淋しさが勝ってたと思う。だから…、もう謝らないで? これで、おあいこ。ね?』

『紗希…。お人よし過ぎ。あんまり泣くと、瞼痛くなって、また熱上がっちゃうぞ?』

『うん…、痛い…。ねぇ? これは、夢じゃない? 起きたら夢だったとかない? 起きたら、夢かどうか尋ねるから、夢じゃないって答えてくれる?』

『わかった、約束するよ。話に付き合わせてごめんな? 寝ていいから…』

瞼が閉じていく[私]の耳元で紘平はそう言って、愛しそうに頭を撫でていた。


夢を傍観している私は、焦ってジタバタしていた。

[私]の馬鹿。まだ、聞きたいことが残っているんだから寝るな。と。


寝ているから夢なのであって、寝るなとはおかしなことだ。とは思いもせずに…。