優しい胸に抱かれて


「っ…、本当は、いつも一緒にいたかった…」

「うん…」

「本当は、待っていたかった…」

「知ってる…」

「辛かった、…っ!」

「ごめんしか言えなくて、ごめん…」

「好き…」

「俺も…」


 苦しくない程度、ぎゅっと強く締め付けられる。


「もう、内緒は嫌…」

「わかった、隠さず言う…」

「いっぱい行きたいとこある…」

「印つけたとこ、全部連れてくよ…」


 震えの収まらない背中を擦る。


「本村さんのカフェ、一緒に行きたい…」

「うん。…それだけ?」

「[なぽり]も一緒がいい…」

「もちろん。…それで?」

「ナポリタンロール、作りたい…」

「一緒に食べよ。…それから?」

「パンケーキとオムライス。作って欲しい…」


 2人でぐずる鼻を啜る。


「俺も、紗希の作ったナポリタン食べたい。あれが、最後のナポリタン。あの味はまだ覚えてる…」

「…だから、っ…、我慢してたの…?」

「そう…、忘れたくないから…。紗希、あとは?」

「あとは…。あとは。…2年分じゃ、全然足りないっ…!」

「確かに…」


 どんどん溢れる涙は止まる気配がないまま。

 大したことも言えないで、思いつきで言いたいことを言って、泣きながら私はようやく意識を手放した。


 意識の方から「さっさと寝ろ」と、見放したみたいに。