どうして、この人たちはこんなに落ち着いていられるのだろう。
どうして、狂気の沙汰としか思えない話に未だに固執しているのだろう。
波打ち際の砂の上に何度も字を重ね書くみたいな、疑惑の裏付けなんてものは無意味なことに思えて。
昨日には戻れなくて、今日では遅くて、明日は剥奪された希望だけで。
明日にしようって、どうして先延ばしにしたのか。
誰にもぶつけようのない怒りと後悔は、悲鳴に近い言葉にならない喚きが咽喉を破る。
取り押さえられていても、その腕の中で狂ったように暴れた。
「…立場や出世がどうでもいい? しがらみばかりの組織にいて、立場がどうでもいいと思って働いている奴はいないよ。課長になったばかりの島野だって、この先もしがらみにまみれるしかない」
「お前の言っているしがらみは、どういうものだよ? 組織にしがみついて個人が負うべき責務を軽減したいという欲求か? それとも、ただの自己保身のみか? 目的達成できればなんでもいいのか?」
「どれもだね。全部島野の言う通り、システムを弄ったのは俺だよ。あんなところでタイミング良く仲間割れ、それを利用する手はないってね。佐々木を取り込むのは実に簡単だったよ。…だけど、俺が仕組んだという証拠はどこにもない。いちいちシステムは落とさないしパソコンは誰でも使える、携帯の履歴だって証拠にはならない」
「…そうやって言い逃れすると思って、この会話はICレコーダーに記録している。ついでに、あのスマホで録画中。それがうまい逃げ口上、とでも思ったか?」
「あぁ、なるほどね。課長の言い付けで来たけど島野の差し金だったのか。…ということは、佐々木は計略に引っかかったわけじゃなく、引っかかった振りか。仲間割れは真実、動揺を見せたのは演技、足場の事故は嘘。じゃあ、あれは…、あれも迫真の演技か?」
「敵を欺くにはまずは味方から、だ。あれは、ちょっとどころか、かなり鈍いって言っただろ。そこまで極悪非道じゃない、あの馬鹿はそれが解ってないだけだ。家族に電話をしたと見せかけて平に掛けた」
「なるほど。…普段、お前らに相当やられてるようだね。可哀相に、あんなに泣き喚いて…」
どうして、狂気の沙汰としか思えない話に未だに固執しているのだろう。
波打ち際の砂の上に何度も字を重ね書くみたいな、疑惑の裏付けなんてものは無意味なことに思えて。
昨日には戻れなくて、今日では遅くて、明日は剥奪された希望だけで。
明日にしようって、どうして先延ばしにしたのか。
誰にもぶつけようのない怒りと後悔は、悲鳴に近い言葉にならない喚きが咽喉を破る。
取り押さえられていても、その腕の中で狂ったように暴れた。
「…立場や出世がどうでもいい? しがらみばかりの組織にいて、立場がどうでもいいと思って働いている奴はいないよ。課長になったばかりの島野だって、この先もしがらみにまみれるしかない」
「お前の言っているしがらみは、どういうものだよ? 組織にしがみついて個人が負うべき責務を軽減したいという欲求か? それとも、ただの自己保身のみか? 目的達成できればなんでもいいのか?」
「どれもだね。全部島野の言う通り、システムを弄ったのは俺だよ。あんなところでタイミング良く仲間割れ、それを利用する手はないってね。佐々木を取り込むのは実に簡単だったよ。…だけど、俺が仕組んだという証拠はどこにもない。いちいちシステムは落とさないしパソコンは誰でも使える、携帯の履歴だって証拠にはならない」
「…そうやって言い逃れすると思って、この会話はICレコーダーに記録している。ついでに、あのスマホで録画中。それがうまい逃げ口上、とでも思ったか?」
「あぁ、なるほどね。課長の言い付けで来たけど島野の差し金だったのか。…ということは、佐々木は計略に引っかかったわけじゃなく、引っかかった振りか。仲間割れは真実、動揺を見せたのは演技、足場の事故は嘘。じゃあ、あれは…、あれも迫真の演技か?」
「敵を欺くにはまずは味方から、だ。あれは、ちょっとどころか、かなり鈍いって言っただろ。そこまで極悪非道じゃない、あの馬鹿はそれが解ってないだけだ。家族に電話をしたと見せかけて平に掛けた」
「なるほど。…普段、お前らに相当やられてるようだね。可哀相に、あんなに泣き喚いて…」



