優しい胸に抱かれて

「…そうだな、何から出そうか」

 紙をめくる音を立て、島野さんはログの写しを手につらつらと読み上げ説明していく。

「…この什器、商品陳列棚の手配確定したのはtenpo6PC社員コード00351島野悟、俺だ。この発注処理したのと、その翌日14時31分42秒、部品の発注処理。更に什器の手配側に部品の発注入れ込んで、追加発注を消去したのは。…s-syohinka13PC社員コード00682倉光一磨。お前だろ」


 引き出しから出てきたクリアファイルに挟まった書類は、この記録の他に発注書とメモ紙が入っていた。メモ紙には簡素な説明が箇条書きされていた。

 蓋を開ければ平っちの件は実に簡単な話だった。

 自社製品のスライディングウォール100枚は、3月の頭にオフィス事業部から商品部へ頼んだものだった。

 受注処理をしたのはいいが、製品番号を間違えて処理してしまったらしく、1週間後に再発注をかけている。

 しかし、すでに製造過程に入っていてキャンセルができなかった。所謂発注ミス。自社製品を発注ミスした場合、買い取り売り込み、どちらかのペナルティを受け、査定にも響く。


 そんな折に、平っちがスライディングウォールの発注処理。これはうちの製品ではなくメーカーの特注、仕入れ扱い。買掛処理は他の処理より早いので、この枠に追加で発注をかけたことにしようとした。発注済のボタンを押してしまえば、あとは経理課が処理してくれる。

 手配は人の手、システムはあくまで売買入力だけ。入力が間違いないか確認するのは経理課の仕事で、発注書、請求書、見積書、納品書。それらの書類の提出は必須。時には指示書や手配書まで提出を促されることがある。

 書類をスキャンしてパソコンに取り込めば、誰でも好きなように切り取り、コピー、張り付け。改竄が自由自在にできてしまう。新たに100枚の発注書を作り、確認印部分をコピペしただけの、単純なものだった。

 これで滞りなく、間違った処理をされてしまうのだ。


 平っちが発注した製品は、メーカーに問い合わせしたところ、受注したのは間違いなく10枚で、納期通り4月の下旬に納品すると確認が取れている。