優しい胸に抱かれて

 何だか寒気がして、暖房入っているのだろうかと天井のエアコンを見上げた。島野さんの声にすぐさま視線は戻される。

「やつあたり? そんな可愛いもんじゃないだろ、愚行に走った馬鹿な奴を懲らしめる。ってとこだろうな? お前だろ、取引先に手当たり次第連絡してかき乱し、スライディングウォールの発注ミスを起こして、柏木の設計図を盗んだのも」

「妙な言い掛かりですね?」

「言い掛かりか。俺にはお前しか浮かばないんだよな、…元、店舗デザイン事業部。現、商品部商品課。倉光一磨」


 ひんやりとした響きで喋る島野さんは、憎しみを込めた瞳を細める。出力してもらったログの紙面に記されていた名前を、小気味がいいほどはっきりと口にした。


「そんなに俺が森田さんに付いていたのが気に食わないわけ?」

「人が作った派閥には興味ない。俺が気に食わないのは、…お前が俺と同期ってことだけだな」


 元、うちの部署。誰が。

 森田さんに付いてたって。

 島野さんはどうしちゃったんだろう。だって、倉光一磨(クラミツ カズマ)って名前は、一連の事件の張本人。

 この人と同期って、どう見たって島野さんより年下にしか見えない。

 島野さんは聞いたことも見たこともないって言っていた。


「え…?」

 日下さんの顔を見ると、3つ目のおにぎりの包みに手を掛け、うんざりした瞳を横へ流す。

「え? じゃねぇよ。せめてその残りの一口を早く食え」

 何度目かわからない「面倒くせぇな」という、フレーズのようなぼやきはBGMになりつつある。