どのくらいの時間、そうしていたかわからない。窮屈なくらい静まり返った作業場。
暖房の送風音、窓に打ち付ける雨の音、パソコンの微かなファンの音。それら一切の雑音も受け付けない。
ひとしきりに視線を張り付けていた左手が、やおらに動きを見せ作業服のポケットを弄る。それでも、左手の薬指に縫いつけられたみたいに私の瞳はしつこく追いかけた。
出てきたのは社員証。
私の右腕を捉まえたまま、上手く両手を使いケースから何かを取り出した。
薬指から指輪を引き抜き掌に乗せたそれらを、私の視線に合わせるように見せた。
「これは紗希の、部屋に落ちてた。こっちは俺の。言ってなかったけど、これと対」
彼の薬指に存在していた輝く指輪と、鈍い光を放つ小さな指輪が視界に入り込む。ケースには指輪の形がくっきりと痕を付けていた。
対って、どういうこと。
「対…」
「…ペア。お揃いってこと」
「それくらい、わかる…」
[対]の意味を聞いているんじゃない。辞書に載っていそうな言葉を知りたいんじゃない。
「紗希の分だけじゃ意味がないものだからさ、これは」
大きい方を自分の指にはめ直し「一つだと意味をなさない、ってこと」と、断りなく小さい方を私の左手の薬指に潜らせた。
「紗希、…この指輪を渡したときに言った言葉は、本心。ずっと俺の側にいて欲しいって言ったけど、本当は俺が紗希の側にいたいんだ」
『いつか必ず…』
そう言って渡された時はもっと輝いていたはずなのに、こんなにもくすんでいる。
暖房の送風音、窓に打ち付ける雨の音、パソコンの微かなファンの音。それら一切の雑音も受け付けない。
ひとしきりに視線を張り付けていた左手が、やおらに動きを見せ作業服のポケットを弄る。それでも、左手の薬指に縫いつけられたみたいに私の瞳はしつこく追いかけた。
出てきたのは社員証。
私の右腕を捉まえたまま、上手く両手を使いケースから何かを取り出した。
薬指から指輪を引き抜き掌に乗せたそれらを、私の視線に合わせるように見せた。
「これは紗希の、部屋に落ちてた。こっちは俺の。言ってなかったけど、これと対」
彼の薬指に存在していた輝く指輪と、鈍い光を放つ小さな指輪が視界に入り込む。ケースには指輪の形がくっきりと痕を付けていた。
対って、どういうこと。
「対…」
「…ペア。お揃いってこと」
「それくらい、わかる…」
[対]の意味を聞いているんじゃない。辞書に載っていそうな言葉を知りたいんじゃない。
「紗希の分だけじゃ意味がないものだからさ、これは」
大きい方を自分の指にはめ直し「一つだと意味をなさない、ってこと」と、断りなく小さい方を私の左手の薬指に潜らせた。
「紗希、…この指輪を渡したときに言った言葉は、本心。ずっと俺の側にいて欲しいって言ったけど、本当は俺が紗希の側にいたいんだ」
『いつか必ず…』
そう言って渡された時はもっと輝いていたはずなのに、こんなにもくすんでいる。



