優しい胸に抱かれて

「なんで工藤が2年で戻ってきたか解るか?」

「…えっと、優秀だから?」

「…やっぱ馬鹿だな、それは結果じゃねぇかよ。お前のためだ、俺がお前に言ったことに、あいつはお前に負い目を感じて欲しくなかったからだ」

「負い、目…?」

 言われていることが何なのか、全く理解できない頭の中が一気に騒ぎ始める。繋がろうとしない言葉が行き交っている。


 2年で戻ってきた理由が、負い目を感じて欲しくなかったとはどういう意味だろう。


「ここまで言ってもまだ解んねぇなら、あいつの席行って見てみろ。キーボードの下をな」

 もっと解り易く噛み砕いてくれなければ、到底理解するのは難しい。キーボードの下に何のヒントがあるのだろう。


 どの席もデスクマットが敷いてあるだけで、キーボードの下にはもちろんそれがあるだけだ。


 使い方は人によりけりで、予定表を挟んでいる人。何も挟んでいない人。貰った名刺を挟んでいたり、忘れないようにメモを挟んだり。

 感心するのは佐々木さんで、何十枚にもなる書類を隠しているのだが、隠し切れていないからマットが盛り上がっている。


 言われてやってきた彼の席。整然とした机の上にはデスクマット以外、余計なものは何もなかった。

「キーボードの下だ」

 日下さんの声が遠ざかり、両手で持ち上げたキーボードの下。


 一瞬で目を奪われ、瞬きをするのも忘れてしまいそうになる。


「…なん、で」

 漏れた言葉は正直で、何でとしか言いようのない疑問がぐるぐると駆け巡る。