優しい胸に抱かれて

 私にインテリア設計を任せた、オーガニックのコスメショップ新店舗。急ぎではない案件。

 その内観の色彩設計に取り掛かったらしいが、統一感のないカラースキームは本当にセンスが悪い。手が付けられないほどのセンスのなさが気になって仕方がない。


「柏木、どっちがいい?」

「ちっともナチュラル感がないので、どっちでもいいです。天然由来、自然の成分が売りなんです。いくら好きでも黄色を取り入れるのはやめてください」

 机の上から荒々しく散らかっている資料を全て取り上げ、これ見よがしにどさりと膨大な書類の束を置いた。


「…判、お願いします。完了報告も出来上がりました、お目通しを。そして、それ、設計図以外はお世辞にもセンスがいいとは言えないので私がやっておきます。こんな状態で、インテリア設計任されてもできる気がしません。それと、気が散ります。センスないんですから無駄に悩まないでください」

「センスないだと? 誰に言ってんだ」

「島野さんにです」

 何度も口にしていることだ。センスがないからと言われて怒っているのか、仕事を取り上げられたからなのか、明らかに不機嫌になった島野さんの目の前へ、代わりに完成したスケジュール表を渡す。


「コーヒー飲みますよね? 淹れてきます」

「店舗レンジャーは生意気な奴ばっかだな。鈍いくせに、誰だ教育したのは…」

 ぶつぶつ書類に文句をぶつける島野さんの方を振り返りながら、一体いつになったらカラーセンスがないことを自覚するのだろうと、眉を顰め首を捻る。


 島野さんが大人しくなったおかげで、再開させた作業は集中力が持続し、粗方片付いた。

 日下さんが出社したのは21時。どちらかといえば帰る時刻に、腹部を押さえ全身を濡らした状態で登場した。