そこに隣のまた隣の席から投じられた、当時係長だった島野さんの叱る声。
『平ーっ、うるさいぞ! 柏木も珍しくうるさい!』
『島野係長、ここは会社じゃないですよー!』
よっしーの隣で平っちが叫ぶ。
『そうだったな。お前等の顔見てたら会社と勘違いするな』
島野さんと、日下さんが向かい合ってランチをしていた。
その更に隣では佐々木さんと彼が、やっぱり向かい合ってご飯を食べている。遠くの私たちの騒がしさを横目に、彼は今日もナポリタンを頬張っていた。
一瞬合った目は、私たちを見て微笑ましそうに笑っている。『その調子』とでも言っているかのような頷きに、私も『はい』と、口パクをして首を一回振って見せた。
『彼女もお宅の社員さんだったんですねー』
騒がしい私たちのテーブルの隣の席に座るサラリーマンが、隣の島野さんへ声を掛ける。近くの会社の人だろうか、背広のジャケットを背もたれに掛け、カレーライスを食べ終え額の汗をハンカチで拭う。
『ああ、あれのことですか? そうですよ、今年入ったばかりの一年生なんですけどね』
躊躇うことなく会話をしているところを見ると、男の人は常連なのだろう。あれのこと。と、箸を持ったままの手でぞんざいに指される。
『いつも一人きりだからてっきり関係ないのかと』
『あれは一人でいるのが好きらしいんですよ』
『そうだったんですね。今日は意外な一面を見せているってことですかね。おおっと、時間がない。私はこれで』
軽く会釈を交わし、男の人はジャケットを腕に掛け伝票を手に去っていく。



