わざとらしいみんなの高笑いが響く。ふざけているように見えるけれど、平っちを思ってのことなのだろう。少しばかり緊張が解けた雰囲気の中に、まだ島野さんの眼鏡の奥が険しく光っている。
「柏木…、ごめん…。八つ当たりして」
「謝る相手は私じゃなくて、丹野さんにでしょ?」
「平? 一度、言葉に出してしまったことは取り消せないぞ? なかったことにはできないから、腹ごしらえの前にすることあるんじゃないのか? 原因解明はそっから、な?」
「工藤さん…」
「情けない顔してないで行っていいぞ、さっさと土下座でも何でも謝ってしまった方がいい。じゃないと、こいつみたいに謝罪のタイミング逃して悪足掻きしなきゃいけなくなるぞ?」
こいつと、島野さんからあからさまに指をさされた日下さんの表情が鬱陶しそうに曇る。
「はぁ? 俺じゃねぇだろ、悪足掻きしてんのは工藤じゃねぇの?」
「こいつは悪足掻きじゃなく、すっとぼけてんだ」
「どっちでもいいし…。大騒ぎするほどのもんじゃねぇだろ、たかが発注ミスじゃねぇかよ。くだらねぇな…」
背後から聞こえた日下さんの声に振り返ろうとした矢先、私の身体が突然、前のめりに傾いた。
何かが勢いよく背中に体当たりしてきて、バランスを崩しつんのめる身体を咄嗟に伸びた腕に支えられる。耳の近くで「紗希、大丈夫か?」と、空耳かもしれない声で囁かれた気がした。
急に何が起きたのだろう。そう頭が働くよりも前に、とてつもなく冷たくて低い声が発せられた。お腹辺りと腰へ回された腕の間で、聞いたことのない声に顔を上げる。自分の身体を支えている主は私の背の向こう側へと注意を向けている。
「ミスがくだらないってよく言えるよな? 日下、お前どういうつもりだよ?」
「別に、佐々木さんに言ったわけじゃねぇよ」
すぐ後ろでそれぞれの不快そうな声が上がる。絡まれた腕を解き、振り返ると、佐々木さんが日下さんの胸ぐらを掴み見下ろす形になっていた。
「てめえのせいで工事ストップ掛かってんだよ。どういうつもりだって聞いてんだよ」
殺気を込めたオーラを纏う佐々木さんは、勢いに任せた平っちの比ではない。怒鳴るわけでも大声を出すわけでもなく、静寂な憤怒を感じる。日下さんへの敵意が目に漂っている。
「はぁ? 知らねぇよ、何の言いがかりだよ?」
「柏木…、ごめん…。八つ当たりして」
「謝る相手は私じゃなくて、丹野さんにでしょ?」
「平? 一度、言葉に出してしまったことは取り消せないぞ? なかったことにはできないから、腹ごしらえの前にすることあるんじゃないのか? 原因解明はそっから、な?」
「工藤さん…」
「情けない顔してないで行っていいぞ、さっさと土下座でも何でも謝ってしまった方がいい。じゃないと、こいつみたいに謝罪のタイミング逃して悪足掻きしなきゃいけなくなるぞ?」
こいつと、島野さんからあからさまに指をさされた日下さんの表情が鬱陶しそうに曇る。
「はぁ? 俺じゃねぇだろ、悪足掻きしてんのは工藤じゃねぇの?」
「こいつは悪足掻きじゃなく、すっとぼけてんだ」
「どっちでもいいし…。大騒ぎするほどのもんじゃねぇだろ、たかが発注ミスじゃねぇかよ。くだらねぇな…」
背後から聞こえた日下さんの声に振り返ろうとした矢先、私の身体が突然、前のめりに傾いた。
何かが勢いよく背中に体当たりしてきて、バランスを崩しつんのめる身体を咄嗟に伸びた腕に支えられる。耳の近くで「紗希、大丈夫か?」と、空耳かもしれない声で囁かれた気がした。
急に何が起きたのだろう。そう頭が働くよりも前に、とてつもなく冷たくて低い声が発せられた。お腹辺りと腰へ回された腕の間で、聞いたことのない声に顔を上げる。自分の身体を支えている主は私の背の向こう側へと注意を向けている。
「ミスがくだらないってよく言えるよな? 日下、お前どういうつもりだよ?」
「別に、佐々木さんに言ったわけじゃねぇよ」
すぐ後ろでそれぞれの不快そうな声が上がる。絡まれた腕を解き、振り返ると、佐々木さんが日下さんの胸ぐらを掴み見下ろす形になっていた。
「てめえのせいで工事ストップ掛かってんだよ。どういうつもりだって聞いてんだよ」
殺気を込めたオーラを纏う佐々木さんは、勢いに任せた平っちの比ではない。怒鳴るわけでも大声を出すわけでもなく、静寂な憤怒を感じる。日下さんへの敵意が目に漂っている。
「はぁ? 知らねぇよ、何の言いがかりだよ?」



