優しい胸に抱かれて

 考えを読まれてしまったのか、はたまた心の内を探られてしまったのか。元々、隠し事は苦手だし、考えだって読まれやすい。部長は軽く息を吐いて、挑み掛けるように私へと視線を合わせる。

「…そんなに頼るのが怖いか? 甘えるのが怖いか? 迷惑掛けるのが怖いか? その足りない頭でよく考えてみろ。それとも、頭のネジをどっかに落としてきたのか? だったら待っててやるからさっさと拾ってこい」

 例えば、本当にネジを拾ってくるなり、佐々木さんの工具入れから1本拝借して、拾ってきましたなんて差し出したとしよう。止めた煙草を再び吸い出して、溜め息を吐かれるのは目に見えている。

 
 怖いかと問われ、怖くないわけがない。平常心が保てない、どんどん心が乱れていくのがひしひしと感じるから、みんなの足を引っ張っている感はどうしたって拭いきれない。


「あいつらだって、お前を頼って甘えてないか?」

 きつく唇を結んだ私にバッシングを受けるかと思いきや、意外な言葉が降ってくる。

「…え?」

「平はすぐにお前に頼る癖がある。佐々木が現場へ行けるのは事務処理をお前に任せているからだ。日下は論外だ、コーヒーくらい自分で淹れれるだろ。丹野は他にもいるのにお前の帰りをいつも待っている。島野は一番適任だと思ってお前に意見を聞くだろ。お前があいつらを少しでも支えているんだとは考えられないか?」

「そんな風に、…思ったことないです」

 私がみんなを支えている。どの辺がだろう。と、顔を顰めた。

 自分にできることは一握りだ。支えているとは微塵にも思ったことがない。考えたこともない。


「それは、押し付けられていると思っているからか? ニュアンスの違いなだけだ。確かに、あいつらは押し付けているかもしれない。だがその分、僅かな時間でも自分が動ける隙間が出来る。自由に動ける時間が出来る。生かせることが出来る。お前が自由に動けるのはどうしてだ?」

「…長島さんや島野さんが、私の我が儘を聞いてくれて、支えてくれているから」

 だから、自由に動けている。しょっちゅう怒られるけれど、最終的には好きにしろと認めてくれる。私も自分の考えを周りに押し付けている。