「それ、何?」
「シュトレンっていうドイツのパン菓子。新作だって、美味しかったよ。食べる? こっち口付けてないから。フォーク貰って…」
貰って来ると立ち上がった私の腕を掴み静止させ「いいよ、これで」と、さっきまで使っていたフォークでシュトレンを口へと運ぼうとする。
「汚い、でしょ?」
「何で?」
何でって、他人が使ったフォークだから。それに口を付けるのは汚いとは言わないのだろうか。
「紗希が使ったやつなら汚くないよ」
って、躊躇わずぱくっと口の中へ放り込んで「ほんとだ、美味い」と目元を綻ばす。
ぱちぱちと瞬きを繰り返す私を見て、優しい表情を向ける。いちいち反応してしまう自分が嫌になる。
再び視線を背け、諦めてまた椅子へと腰を落ち着かせた。
「表の看板、塗り直したみたいだな」
「旦那さんが色々やってくれるって」
「そうか、それならアフターケアいらないな? 家族の絆が深まってくれたんならさ」
「あの時…、それを見越してたの?」
「さあ、どうだろ。家族がいるのに寂しそうで、カフェ開けばお客さんに囲まれて独りぽっちじゃなくなるって言ってたんだ」
遠い目をして当時のことを思い出している彼は、切なそうに眉を下げる。
「何にも知らない、人の家のことなのに偉そうに口出してた。あの頃は必死だったからさ。まあ、今もか」
「でも、それがあったから、そのアドバイスがあったから。奥さんは今が一番充実していて幸せだって言ってくれてるよ」
「そう言ってくれたら俺も幸せ。だけどそれは結果論。中には関係ないのにでしゃばるなって怒る人だっている。どこまで踏み込んでいいかわからなくなる時がある」
相手に親身になって、それでいてさりげなくて、きちんと考えているから悩んで夢中になって。そんなところが好きだった。
ほんと、変わってない。変わってなさ過ぎて、無意識のうちに次いでた名前。
「紘平らしいね…」
「シュトレンっていうドイツのパン菓子。新作だって、美味しかったよ。食べる? こっち口付けてないから。フォーク貰って…」
貰って来ると立ち上がった私の腕を掴み静止させ「いいよ、これで」と、さっきまで使っていたフォークでシュトレンを口へと運ぼうとする。
「汚い、でしょ?」
「何で?」
何でって、他人が使ったフォークだから。それに口を付けるのは汚いとは言わないのだろうか。
「紗希が使ったやつなら汚くないよ」
って、躊躇わずぱくっと口の中へ放り込んで「ほんとだ、美味い」と目元を綻ばす。
ぱちぱちと瞬きを繰り返す私を見て、優しい表情を向ける。いちいち反応してしまう自分が嫌になる。
再び視線を背け、諦めてまた椅子へと腰を落ち着かせた。
「表の看板、塗り直したみたいだな」
「旦那さんが色々やってくれるって」
「そうか、それならアフターケアいらないな? 家族の絆が深まってくれたんならさ」
「あの時…、それを見越してたの?」
「さあ、どうだろ。家族がいるのに寂しそうで、カフェ開けばお客さんに囲まれて独りぽっちじゃなくなるって言ってたんだ」
遠い目をして当時のことを思い出している彼は、切なそうに眉を下げる。
「何にも知らない、人の家のことなのに偉そうに口出してた。あの頃は必死だったからさ。まあ、今もか」
「でも、それがあったから、そのアドバイスがあったから。奥さんは今が一番充実していて幸せだって言ってくれてるよ」
「そう言ってくれたら俺も幸せ。だけどそれは結果論。中には関係ないのにでしゃばるなって怒る人だっている。どこまで踏み込んでいいかわからなくなる時がある」
相手に親身になって、それでいてさりげなくて、きちんと考えているから悩んで夢中になって。そんなところが好きだった。
ほんと、変わってない。変わってなさ過ぎて、無意識のうちに次いでた名前。
「紘平らしいね…」



