暖まった彼の部屋で、渡された誕生日プレゼントは掌サイズの小さな箱には、私でも知っているブランド名が輝いていた。
『開けていい?』
『いいよ』
小さな箱と照れたような彼の顔を何度も交互に見た。
ドキドキと高鳴る胸の音が指先にまで伝わって、箱を開く手が震えた。
『紗希? この先、喧嘩してくっついたり離れたりするかもしれないけどさ、ずっと俺の側にいて欲しいんだ』
正方形の箱を開けると、銀色に光るシンプルな指輪がすっぽりと収まっていた。大きさといい形といい、想像したのと同じ物だったからそれが瞳に移し出されて、途端に涙が溢れた。
『綾が家族が増えれば楽しいって言ってたの、覚えてる? 今の俺にはそれが精一杯だけどさ、いつか必ず…』
指で私の頬を伝う涙を拭いながら、『家族になろう?』と、付け足した。
『私でいいの?』
『俺には紗希が必要』
どうしてこんなに涙が出るのか。
戸惑いと、嬉しさと、安心感と、処理しきれない色々な感情が一気に押し寄せて、私はしばらく泣いていた。
自分でもサイズなんて知らないのに、サイズは測ったかのように左手の薬指にピッタリだった。
『紗希が寝てる間に測ったの。職業柄、割り出すのは得意だから』
夜、眠りに入る前。
試験の合格発表は来月だけどさ、落ちたとしても雪が溶けたらまたゆっくり、どこか出掛けよう。紗希が行きたいところに行こう。
うつらうつらと目を閉じた私の耳元で、語る彼の言葉は夢だったのか、現実だったのか、朝、目覚めるとどちらかわからなくなった。
2人の時だけ指輪をつけて、仕事の間は商品に傷を付けるかもしれないからと、冷やかされるのも恥ずかしいし、なくさないように社員証のケースの裏側に潜めた。
いつでも取り出せて、眺められる社員証のケースがこんなに優れたものなんだと感心するくらい。これは彼の提案だった。
優しい光を放つ指輪は、片時も離れず私の側にあった。



