優しい胸に抱かれて


オムライスばかり食べているのを知られていたことよりも、そんな風に見られていたことが恥ずかしかった。思わず俯く私に、更に言葉を紡いだ。

『まあ、俺達が騒がしいんだろうけどさ。柏木? 気を遣うのはいいんだ。いいんだけどさ、あまり気にし過ぎても疲れるだろ? もっと肩の力抜いて、もっと自分のことも話せよ。緊張感は大事なんだけど、緊張し過ぎ』

優しい声だった。泣いている赤ちゃんをあやすような、そんなふくよかで優しい口調。きっと顔を上げて目を合わせば、もっと優しい顔を向けていると思った。

暖かくて涙が出そうになった。


『うちの会社名、ルミエールって意味知ってる?』

マンションや施設に多く使われている名称だなとは思っていたけれど、特別気にしたことはなかった。

ルミノールは血液反応だし。と、何だろうと考えていると。

『血液反応じゃないからな?』

にやりとした上目遣いで私の顔色を伺う彼は、『今、そう思っただろ?』と、泳がせた瞳で分かり易く反応を見せた私に、したり顔を見せた。


『フランス語で[光]。クライアントだけじゃなく俺らの可能性を導く光を照らす道づくり。が、モットーなんだってさ、口にするとなんだか恥ずかしいけど。せっかく芸術学科出てるんだからさ羨ましいよ、柏木は。俺みたいな建築だけのやつより、得意分野がいくつもあるじゃん。勿体ないと思うよ、それをさらけ出さないって』

そこまで言って、コーヒーに口を付けて更に話を続ける。


『俺も、…話し下手だから気持ちはわかる。緊張したし、何話していいかわからなくて、テンパったりなんてのは毎日だったよ』

『え…? 主任が、ですか?』

この時の私は単純に、彼が話し下手だとか俄に信じられなくて、その台詞に驚いた。