優しい胸に抱かれて


反省会という名目で奇数月に行われる、ただの飲み会も相変わらずで。

平っちはめげずに、興味ないとあしらう日下さんと彼に合コンを勧めていた。

『絶対にダメっ!』

『なんでよ? 2人が付き合うきっかけを作ったのは俺じゃん?』

『絶対、違う!』

『あはは、心配しなくても行かないよ』

3人の間に入ってムキになる私を笑い、平っちが『じゃあ、柏木に内緒で行きましょう』と、こそっと耳打ちをしていた。


『グレープフルーツサワーなんて可愛いもの飲んでんじゃねぇよ』

日下さんに絡まれるのはお約束で、佐々木さんからは首を絡め取られて、よしよしされる。助けてくれる彼の台詞が変わった。

『佐々木さん、セクハラで訴えますよ?』

『何で、俺がお前に訴えられなきゃいけないんだよ』

こんなやり取りでさえも楽しくて、私はそれを微笑ましげに眺めていた。


夜遅い時間、たまたま車で通った大通公園には大きな四角い木枠が組まれた、建物と呼べるほどの巨大なものが、あちこちに設置され、枠組みの頭から雪が顔を出していた。

『あの枠の中に雪詰めて固めて、木枠を外してから荒削りしていくんだって。そっから細部を削って仕上げていくって聞いた』

クライアントが以前、ボランティアで制作に携わったことがあった話を聞かせてくれたんだと、教えてくれた。

『コンクリートの打設みたいだね?』

『言われてみれば…、鉄筋のような骨組みは入ってないけどな』

骨組みがないのにしっかりとした雪像が出来るんだ、なんて感心していた。興味を示した私を見て、帰りには大通公園を通ってくれて、雪まつりの雪像制作の過程を2人で楽しんだ。

観光客より一足先に、足場の解体が完了し雪像が露わになった様子を眺めていた。


綾子さんとは電話で直接お喋りする仲になった。2、3ヶ月に一度は喧嘩して飛び出してくると言っていたが、冬は来なかった。

『冬道を何時間も掛けて迎えに来てもらうわけにはいかないでしょ。心配して欲しいから出て行くのに、こっちが心配になっちゃうじゃない』

『春先、待ってますね』

なんてまるで喧嘩して飛び出して来てくださいと言っているようで、おかしなことを口走った私を豪快に笑い飛ばし、『喧嘩のネタ蓄えておくわ』と、綾子さんはおかしな台詞で返事をした。



仕事は順調で助けられ、教えられながらも一歩ずつ進んでいた。

初めての事がたくさんあって、嬉しくて恥ずかしくて、幸せで。2人のゆっくりとした楽しい時間はあっという間に流れていき、3月。1年が経とうとしていた。