聞けば、旦那さんと喧嘩して飛び出してきたらしく、喧嘩の原因は脱いだ
靴下を裏返しにしたまま、洗濯機に放り込むことを咎めたことだった。
『脱いだ時にきちんと表に返せば済むでしょうっ! って言ったらなんて言ったと思う? 洗濯の前にお前が表に返せばいいだろって言ったんだから!』
怒ってはいたが、旦那さんが迎えに車を走らせているらしく、旦那さんの話をしている間の綾子さんは優しい顔をしていた。
『旦那さん、優しいんですね。札幌まで迎えに来てくれるなんて、愛を感じます』
『紗希ちゃん、いい子ね。うちの弟には勿体無いわ。あいつ、無愛想でしょ?』
そう言われて、目が点になる。どこが、無愛想なんだろうと。私の知っている無愛想な人は長島課長くらいだった。
『無愛想、ですか? すごく、優しいです』
『んん? もしかして、紘平は紗希ちゃんには違う顔を見せてるのかしらね』
『…それは綾が実の姉だからだろ。いきなり押し掛けられて、自分の彼女を変な女呼ばわりされたら誰だって無愛想になりますけどね? さっきまで怒り狂ってたのに何で打ち解けてんの?』
彼は少しむっとした顔を見せるも、意地の悪そうな笑みを浮かべるお姉さんに眉を寄せていた。
『怒り狂ってたって何よ。お母さんに怒られたでしょ。色々聞かれなかった?』
『…根掘り葉掘り、あれやこれや』
相手はどんな子?から始まって、名前、年齢、実家、性格等々の質問攻めにいちいち答えていられないと。挙句に『よそ様の娘さんを誑かして全くこの子は』と、謂れのない非難を浴びせられ、つらつらと説教をされたとぼやいていた。
最後に『今度、お盆にでも連れて来なさい』と釘を刺されたと、髪の毛をくしゃくしゃにしながら眉を顰め、溜め息を漏らした。
『…え? 私?』
『嫌?』



