優しい胸に抱かれて

「あっそ、決まってねぇじゃねぇかよ」

 興味なさげに日下さんシャープをくるくる回し、島野さんが眉を潜め見上げる。
 
「手応えはあったのか?」

「前向きに検討するとは言ってくれたけど、何とも微妙。まあ…、俺のおかげっていうより、丹野の大好きなこの人のおかげ」

 ふわりと彼の匂いがしてポンと肩を叩かれる。顔だけ動かすと隣に並ぶ彼が嬉しそうに頬を綻ばしていた。

「どうして柏木係長のおかげなんですか?」

「本当にちゃんと見てきたのか? うちに鈍感は2人もいらないぞ」

 不思議そうにする丹野さんに、島野さんが呆れた顔をした。私は肩に乗った温もりに困惑する。

「ほんとに紗希の追っかけなんだな?」

 平っちにでも聞いたのだろう。耳元でひっそりと囁かれて、ぴくりと体が反応する。

 それが伝わったかもしれないと誤魔化すために「私は何もしてません。利害関係が一致しただけです。それに重いです」と、まだ肩に置かれていた手を払う。きっと顔に出てる。眉と眉の間に皺が出来ているだろう。それを見せないように体の向きを変えた。

「ほら、仕事だ仕事。丹野、解らないならニットカフェで柏木が何を話していたのか思い出せ」

「はい…」

 島野さんの一言に丹野さんが思い出そうと難しい顔を見せ、その場に固まっていた全員が自分の持ち場に戻る。