優しい胸に抱かれて

 そうして今度は、サワイクラフトからがやがやと三人が戻ってきた。

「柏木のおかげでやっと話が進んだよ。これで心おきなく合コン行けるわ」

「だから、褒められたものじゃないって言ってるの」

 平っちは人の話そっちのけで、来週の歯科助手との合コンの段取りをしに電話を耳に当て出て行く。
 
 目をきらきらと輝かせて入ってきた彼女を見て、やっぱり行って良かったと思った。

 興奮気味の丹野さんの傍ら、島野さんが画面から顔を上げる。

「…工藤、まさか手抜いてないよな?」

「まさか。おかげで手芸好きだと思われた」

「そいつは気持ち悪いな」

 おでこの皺を思い切り歪ませた島野さんは、本当に気持ち悪がっている。彼はそれを笑い飛ばすとこちらを覗き込む。

「これでおあいこ、な?」

 私は目を合わすことなく、こくんと頷いただけの返事をした。おあいこどころか頼んでいない宣伝のことまで処理してくれた。

「どうだった、丹野? 勉強になったか?」

「はい、島野さん! すごかったです。ぽんぽん会話が飛び交ってました!」

「そいつは良かったな、柏木に感謝しとけ」

 島野さんはそう言うと、嬉しそうに話す丹野さんを満足げに一目見る。嬉しさを分かり難く表現したのち、ディスプレイに目線を戻した。

「はい、ありがとうございました! すごかったですよ、押したり引いたりして。デッドスペースの使い道提案して、レッスン二つも追加したりして」

 声を大にする彼女に迷惑そうにする日下さん。

「すげぇのはわかった、少し静かにしろ」

「すみません…」

「それと、どれも設計にも施工にも関係ねぇだろ」

「それは…、そこから続きあるんですよ! 決まっていなかったレッスン室のデザインが決まったり、それと工藤さんのおかげで北見店の改装決まりそうなんですよ!」

 日下さんを怖いと感じている彼女は、その日下さんに注意され小声になるも、怯むことなく堂々と接していた。