優しい胸に抱かれて

 会社へ戻ると、私1人の姿に島野さんが眉を歪ませた。

「丹野はどうした。どういうことだ?」

 いきさつを説明すると、目の色を変えて「てめえは馬鹿か?」と、罵ったのは言うまでもない。

「二課の人間を一課に任せる奴がいるか。しかも、一課に情報売りやがって」

 眼鏡を光らせて尤もらしい言葉を吐き捨てる。でも、怒ってはいないと判断した私は謝罪も述べないで黙って席に着いた。

「聞いてんのか?」

「一課も二課もありません。同じ部署です。頼れと言ったのは島野さんです」

「頼るところが違うだろうが、馬鹿め。何かあったら電話をしろと言ってるんだ。鈍いから意味がわからないのか?」

「わかってます。…それに、鈍くないです」

 そこに、プラージュから戻った日下さんは適当な空いている席へ、どすっと音を立て椅子に腰を下ろす。

「あぁ、ったく。相変わらずだなあの飯塚オーナー」

「プラージュ、どうでした?」

「煮え切らないで終わった。柏木、コーヒー。それと昔のファイル出しといてくれ」

 大きな溜め息を吐いて、楽しげに画面に向かう。日下さんは困難であればあるほど楽しそうにした。島野さんはそれ以上一言も喋らず作業に集中していた。

 そんな二人と自分にもコーヒーを淹れたのち、保管庫からファイルを引っ張り出し日下さんへ手渡し、報告書を仕上げるためキーボードを叩く。