優しい胸に抱かれて

 本当は来たくなかった。わざわざ会いになんて、しかもお願い事を引っ提げて。だけど、私が見せられなかったものを、足りなかったものをきっと見せてくれる。補ってくれる。

 そのうち解る、いずれ解る。その時に知りたいことはあとになってから知ることが多く、あとからでは手遅れなこともただあって、言葉で表現したところでは伝わらない、行動に起こして自分で解決して理解すること。


 メモ帳の大事な最後のページを使って書いた殴り書き。ニットカフェのオーナーから聞いた情報だった。

[情報]の文字に二重丸で囲った先。

[サワイクラフト北見店改装の施工会社検討中。商談のやり取り見せてあげて欲しい]に続き。

[タティングレースと羊毛フェルトの先生を紹介できる。これは昨日のお礼]と、ニットカフェの水元さんの連絡先を付箋に書いて貼り付けた。
 

 俺は営業マンじゃないと訴えた瞳に。出来ないとは言わせない、お願い。と訴えた。

 
 同期で良きライバルの平っちは、普段は褒められたものではないが、人なつっこいから誰とでもすぐに打ち解けて相手と真剣に向き合っている。

 私にたくさんのことを教えてくれた彼は、繊細でしなやか。相手の心にさりげなくすっと入り、引き出しを開けて探し物を見つけ当てる。
 
 ニットカフェを開こうとしている水元さんとの他愛もない会話。