毎日コツコツと作り上げていた奥さんの、丁寧なハンドメイド作品が飾られていった。
そんな中、出向先の東京へと島野さんがいなくなった。
『絶対3年で絶対戻ってくるぞ。柏木、寂しかったら電話してこい』
と。でも、私からは一度もしなかった。なぜなら、島野さんからちょくちょく電話が来ていたからだ。
10分程度話しをし、挨拶代わりに『3分経ったな、シュワッチ』という言葉を乗せ、電話が切れた。
3月30日。
引き渡しまでの半月はあっという間だった。最終確認に1日を費やし、村本さん夫妻が揃っている日に、立ち会ってもらった。内外装どちらも問題なく、すんなり引き渡しとなった。
『営業許可証と食品衛生責任者のプレート入れです。保健所の調査は明日でしたよね? 許可証が発行されるまで待ち遠しいかと思いますが』
彼がこちらで用意した木製のフレームの許可証入れを渡す。
『本当にありがとうございます。保健所に提出する図面まで書いてもらって、ここまでしてくださって』
夫妻は私たちに頭をさげるばかりで、こちらが恐縮してしまうほどだ。
『とんでもない、何かあれば何時でも相談してください』
『営業後に不具合あったら連絡くださいね』
『本当に何から何まで、ありがとうございました』
掲げられたお店の看板を見上げて涙ぐむ奥さんに釣られて、私まで泣きそうになった。
『オープンして落ち着いたらお客さんとして来ます。それまで、奥さんが娘さんと考えたメニュー楽しみにしておきますね』
『ええ、お待ちしています。おかげで娘との距離が縮まった気がするわ。二人でアイデア出し合うのが楽しくて楽しくて』
『遅くまで小競り合いされてこちらは迷惑してるんですがね』
みんなの笑い声が響きわたる。
『柏木さん、ありがとう。細かいところまで気を遣ってくれて、理想のカフェに仕上げてくれて、本当にありがとう』
涙声の奥さんは、私を優しく暖かい腕の中に包んでくれた。



