優しい胸に抱かれて

 こうして嬉しいことを言ってくれるような後輩が出来たんだから、ちゃんと前を向いて、胸張ってしっかりしなくちゃ。余計なことなんて気にしていられない。

「ありがとう。14時には出るから、それまで用意しておいて?」

「はい!」
 
 彼女の緊張が移ってしまったわけじゃないが、誰か後輩をプランニングに連れて行く時は、いつも緊張する。後輩がミスするよりも、自分がミスしてしまわないかが不安だ。その不安を見せないようにするのが特に苦労する。

 後輩が何か失敗をやったとしても、そのフォローは私がすればいい。でも、私自身が何かやらかしても誰も手助けできない。失敗を取り戻すのは、責任を受け持つのは自分自身。


『柏木や平が何かやらかしても、俺はまだその責任を取れない。大して出来もしないのに、言いたいことは言って偉そうで。だからって自分の仕事に無責任ってことじゃないんだ。だけど、責任も取れないのにさ、柏木たちの上司って。可笑しいだろ?』


 今ならそれが痛いくらい解る。

 彼だけじゃない、私もそれを通過してきた。

 あの人は、どんな思いで私に話してくれたのだろう。どんな思いで接してくれていたんだろう。どんな思いで「大丈夫」って言い聞かせてくれたのだろう。

 私は、「大丈夫」と彼女に言い聞かせながら。自分自身にも「大丈夫」そう言い聞かせている。