エレベーターは、ポンと軽快な音で、到着を知らせる。
3015号室、部屋番号を確認して、カードキーを差し込み扉を開ける。
部屋に入ると、ホテルだけど、西園寺さんのプライベートルームだと思うと、凄く緊張する。
「おじゃましまーす。」
窓の外は、少しずつ街路灯が点き始める。
道路を走る車、歩道を歩く人達が小さく見え、まるで小さな小さな、小人の世界。
私もこの道、何度も歩いてる…
ひょっとして西園寺さんとすれ違っていたかも…
そこの貴方?
今すれ違ったその人が、貴方の運命の人かも知れないわよ?
私の運命の人は、西園寺さん?
そうあって欲しい…
カチャと扉が開いて、西園寺さんが入って来た。
私は「お帰りなさい。」と微笑む。
すると彼は一瞬目を丸くして驚き「ただいま!」と私を抱きしめる。
今度は私が目を丸くして驚く。
「いいなぁー。こういうの!」と彼は微笑む。
「食事、外に食べに行こう? ホテルの中だとゆっくり出来ないから。」
彼はこのホテルの支配人、お客様や従業員の事が気になるのだろう。
少し歩いて、彼がよく行くと言うイタリアンレストランに入った。
「ここのアンチョビピッツアが好きで、よく来るんだ。」
「私もアンチョビピッツア好きです。」
「良かった。 ワインも飲むよね?」
「はい。」
西園寺さんは、アンチョビピッツアと白ワインを頼んでくれた。
「このピッツア本当に美味しい。ワインもスッキリとした甘味で、美味しくて飲み過ぎちゃいそう?」
紅くなった頬を掌で覆う。
「遥ちゃんは、本当に美味しそうに食べるね?」
「美味しい物を食べてる時が、一番幸せだなーて、私、思うんですよね。」
「俺と二人っきりの時より?」
西園寺さんは頬杖を付いてニコって笑う。
もうその顔反則…
私は俯いて首を左右に振る。
その後も、オススメのピッツアを食べ、デザートのティラミスまで食べて幸せだった。
勿論、西園寺さんと一緒だったから!

