双子の御曹司


「じゃ!お昼行って来るんで、お願いします。」

バックヤードへ出て、私は食堂へ向かう。
その時、誰かが後ろから走って来る音が聞こえて来た。

「ハァー…凪沙だな?」

振り返るとやっぱり凪紗だった。

「もぅ! 休憩入るなら、誘いなさいよねー?」

「はいはい。ごめんなさい。」

食堂に入ると、メニューを見て、凪沙は直ぐに注文する。

「あんまりお腹空いてないから…おばちゃん、親子丼の大盛りと、ぶた汁!」

「凪沙お腹空いてなくて大盛? どんな腹してるの? 私はBランチの塩さば定食お願いします。」

少し離れた窓際の席に、向い合って座り、凪沙は身をお乗り出して来た。

「で?」

「は? で? ってなに? 話すような事は無いよ?」

「あんたさぁー、さっきお局様から助けてあげたじゃん? さぁ話しなさい! 落ち込んでた遥に何があったのか!?」

「えーと… 西園寺さんと… お付き合いする事にしました。」

「へぇー、昨日ついにしちゃったの?」

「してないから!! 昨日、食事して送ってもらった、だけ…」

「送ってもらった、だけ? 何もされなかったの?」

「オデコに… キスはされたけど…」

「はぁあー それだけ? 西園寺さん、いくつだっけ?」

「えーと…32だよ?」

「32で、オデコにキスって、小学生か!?」

凪沙は呆れながらも、親子丼を食べ始めた。

「あっメールしないと………よし!」

西園寺さんに、シフトをメールする事になっていた事を思い出し、メールを送った。
送信ボタンを押すと、すぐに西園寺さんから電話がかかって来た。

「もしもし、お疲れ様です。」

『ククク お疲れ様か? 今、大丈夫?』

西園寺さんの声が聞けるだけで頬が緩む。

「はい! 休憩なんで?」

『今日は早番なの?』

「はい、早番です。」

『そっか、その時間には迎えに行けないなぁ…』