双子の御曹司


「ふぅー危ない危ない。お局様に睨まれたくないよ。」とひとり苦笑する。

売り場に戻り、佐野さんに挨拶をする。

「おはようございます。」

「おはようございます。チーフ、恐竜の水ピス、うちの子ども会で、100個引き受けてくれるそうです。」

「え? 佐野さん話してくれたの?」

私のミスで恐竜の水ピスを、200個売る事になって、何か考えないと! と、思っていた所だった。

「今年の役員と仲がいいので、話したら快くOKしてくれました。」と微笑んでくれる。

「ありがとう。」

私のミスを、早々に手を尽くしてくれる佐野さんには、感謝しかない。
私が、ここへ移動になって来た時にも、右も左も分からないなか、どれだけ、助けてもらったことか…。

「これでちょっとは楽になりますよね?」

「ちょっとどころか、凄く助かる本当にありがとう。」

嬉しくなって、思わず佐野さんに抱きついていた。

お昼を過ぎた頃、麗華ちゃんが出勤して来た。

「おはようございまーす。」

「おはよう。ちょっちょっと麗華ちゃん近い…」

麗華ちゃんは挨拶するなり、私の腕にへばり付いて来た。

「遥さん、昨日のデートどうでした?」と麗華ちゃんはニヤニヤして聞く。

麗華ちゃん、いきなりですか?

「うん…素敵なお店に、連れて行ってもらったよ?」

「で?」

「で? って、食事して送ってもらった。」

「それだけ? つまんなーい。 お持ち帰りされなかったんですか? あんなに素敵な人だから、朝は、よっぽど素敵な言葉で起こしてくれるんだろうなって、期待してたのに! 本当に何も無かったんですか?」

起こして貰う前提なの?

「なに期待してるの?」

額にキスされたけど、それは言わない。
きっと、それだけで、テンパった私を笑うだろうから!

「それより麗華ちゃん、お願いがあるんだけど?」

「なんですか?」

「実は金曜日、稔君の誕生日に呼ばれてて、その日遅番なのよ? 麗華ちゃん、早番と変わってくれないかな?」

「いいですよ? って言うか、有休使ったらいいじゃないですか?」

「だってその日、佐野さん休みだから、麗華ちゃんフルになっちゃうよ? ダメダメ!」

「何言ってるですか? いつも遥さんフルやってるじゃないですか?」

「でも…」

「その代わり、土曜日と日曜日の休み変わってくれなせん? 水野さん日曜日休みなんで?」

「いいよ! 私も土曜日休みの方が嬉しいし。 ありがとう麗華ちゃん!」

「いえいえ、お互いラッキーって事で!」

「あっ佐野さん、麗華ちゃん、夏休みの企画、うちは4周目になったんで、よろしくお願いします。」

「了解でーす」