西園寺さんは、私の気持ちなど気にしていない様だ。
何処まで行くのだろう…
こんな気持ちのまま、彼と一緒に居たくない!
「止めて下さい! 私、降ります!」
「いえ、止める事は出来ません! 降りられるのも困ります。」
私の願いは聞き入れて貰えず、互いに何も喋らず、私はずっと窓の外を見ていた。
暫く走ると住宅街に小さな森が見えた。
森の入り口には《れすとらん木苺》と小さな木の立て札の様な看板が見えた。
そして、その森へ少し進むと白い可愛らしい洋館が見えてきた。
まるでおとぎ話に出てきそうな建物だ。
車を止め、西園寺さんが「着きましたよ?」と車を降りたので、仕方なく私も降りた。
するとレストランの扉が開き、中から女性が迎え出てくれた。
その女性は、いきなり西園寺さんに抱きついたのだ。
「竜仁いらっしゃい!」
えっ?……この人……
嬉しそうに彼に抱きつく彼女は、あの時の人だった。
「マリア?」
西園寺さんは自分から彼女を離すと、「こちら、遥さん。」と私を紹介した。
えっ??
彼女に、見合い相手を紹介する為に、私を連れてきたの??
すると彼女は、今度は私に抱きついて来た。
え?……
「遥、いらっしゃい! 会いたかったわ!」
は?……
会いたかった?……
私に?………
私は何が起こっているのか分からず、黙ってされるがままだった。
「マリア? 俺達、お腹空いてるんだけど?」
「ごめんなさい。さぁ入って、アンディに美味しいもの作ってもらうわね?」
彼女は、西園寺さんの問に我に返り、私から離れると微笑んで、店内へ迎え入れてくれた。
お店の中のインテリアも素敵で普段の生活を忘れさせてくれるようだった。
放心状態だった私が素晴らしい店内にうっとりしていると、
「気に入ってくれましたか?」と、西園寺さんが言う。
「はい! 素敵なお店ですね?」
私は車の中での会話など、すっかり忘れていた。

