以前は商品の売れいきをデーターを見て、本部が売れてない店から売れている店へ、商品を移動させていた。
しかし、データーだけでは分からない事もあるからと、2年前から各店舗のチーフに任せられていた。
その為、どれだけ売れるか先読みして、在庫予算内で発注しなければならない。
読み間違えると、売れ上げに響いてしまう。
だから、他の店も必要以上の在庫は抱えたくないはずだ。
これだけの数を移動させるには、どれだけの店に頭を下げ、お願いしなければいけないのか…
私はなんてミスをしたのか、膝の上で手を握りしめ悔しさで顔が歪む。
「そんな顔をするな! してしまったミスは仕方ない。 今後で取り戻せばいい。」
膝の上で握りしめていた手の甲に一滴落ちた。
一滴…また一滴……
悔しい…
どうして初歩的なこんなミスを…
水野に頭下げさせて…
「ごめん…水野ごめん……」
「100個は夏の企画のプレゼントに使ってくれるように、伊月さんに頼んである。 残りの200個は責任持っておまえが売れ! いいな!?」
200個売るなんて簡単な事ではない。
だが、あえて売れと言ったのは水野の優しさだとわかる。
「うん。 必ず売る!」
水野の優しさに、水野の期待に必ず応える。
涙を掌で拭って、私は、水野に笑顔を見せた。
「俺いい奴だろ? でも惚れるなよ!」
「惚れるか!!」
顔を見合わせて笑う。
有難う水野…
水野と売り場に戻り、佐野さんと麗華ちゃんに頭を下げた。
佐野さんは「チーフでもミスするんだって、ホッとしたわ?」なんて言って笑ってくれた。
麗華ちゃんは「200個なんて言わないで、600個全部売っちゃいます?」って真顔で言う。
「いやいや! それは無理だから!」と言うと「ですよね?」って笑ってくれる。
私はいい仲間に囲まれていると感謝する。
「じゃ麗華、俺行くわ?」と水野が右手を上げる。
「水野帰るの? 麗華ちゃん待ってないの?」
「あーまだ仕事残ってて、本部に戻らないといけないんだ。 麗華、今晩連絡するから!」
「あれ? そう言えば…今、麗華ちゃんの事、呼び捨てにした? 水野偉そう!」
「何言ってる? 今日来てからずっと、そう呼んでるし! お前がぼーとしてたから、気付いてなかっただけ!」
水野はなに食わぬ顔をして、手を振って本社へと戻っていった。
一方の麗華ちゃんは真っ赤な顔をしてる。
可愛いなぁ…

