あの日から、特に何があるでもない日々が過ぎていた。

「西園寺さんどうしてるかなぁ?」

あれから、西園寺さんからも連絡もない。
先週眼にした光景を思い出して窓の外へ目を向ける。

今日も雨が降っている。
朝の天気予報で梅雨入りをしたと言っていた。

「…るか、遥!!」

「あぁ凪沙お疲れ!」

「もぅどうしたの? 何度も呼んだんだよ?」

「え? あっごめん。 気が付かなかった。」

「なにかあったの? 元気ないじゃん? もしかして恋わずらい? 聞いてあげるよ話してご覧!」
ニヤッと笑う凪沙。

これを恋患いと言うのだろうか…?
「ハァー……」

再び大きな溜め息をつく。
今日は何度目だろう…
『溜め息をつくと幸せが逃げる。』と言われたが、私に逃げるほどの幸せが有るのだろうか…?

「あれから御曹子とどうなったのよ?」

「どうもなってないよ?」

「えっ何も?」
凪沙は目をぱちくりさせる。

「何も…」

「はっー!? 見合いしてから1ヶ月近く経つでしょう? 何もないの嘘っ!?」

凪沙にお見合いの次の日、彼の部屋に泊めてもらったことを話した。

「えー同じ部屋に一晩居て、何もなかったの? キスも!?ってか、御曹子てヘタれじゃん!?」

「あれは電車が止まって帰れないから、仕方なく泊めてくれただけで…そう言うんじゃないから!」

「イヤイヤ! 遥に一目惚れしたんでしょ? 大の男が何もしないってありえないでしょう!?」

凪沙は顔を左右に振り、呆れたという顔をしている。

「そっそんな事ないよ!」

「まぁ遥には、そぅ言う人が良いのかもね? グイグイ来る人だと、あんた逃げちゃうでしょ?」

「………」

確かに凪沙の言うとおりかもしれない。

「で、それから連絡もないから、落ち込んでると言うことか?」

「別にそんなわけじゃないけど…。」と、言いつつ、落ち込んでるのは確かだと自分でもわかってる。

「あんたさぁ人の事となると積極的に動くくせに、自分の事となるとダメなやつだね? 自分から電話すれば良いじゃん?」

「………」

俯く私へ顔をあげろと言って、凪沙は頑張れと肩を叩いて去って行った。

凪沙には話さなかったが、先週の休みに、久しぶりにウィドショッピングをしていたら、西園寺さんが綺麗な女性と腕を組んで歩いていた。
彼は私に気が付かなかったが、間違いなく竜仁さんだった。

あんなに綺麗な人が側に居るのに…
私に一目惚れしたとか、お見合いのセッティグまで頼むなんて…
お金持ちのすることは分からない。
やっぱり住む世界が違うってことかな…?