勇気を出して、空を見上げて。



◆side:心奈


生徒会長に勉強会をする、と声をかけられて学校に来ていた。


八月に入って、数日。相変わらず星とユズの家で生活している。


熱が下がってから出ていこうとしたら、星に夏休み中はいろと強引に引き止められ。ユズに助けを求めたけれど、案の定ユズも星側に着いた上、仁にも言われたら出ていくことなんて出来なかった。


確かに行く場所はなかった、けれど。


他の子のことを考えれば、あたしだけがこうして安全地帯にいる訳にもいかないと思えて。


それも、そっちには手を回したと言われればもう反論する術なんてなかった。


でもまあ、そろそろ一回は帰らないと、なんだけど。


いつまでも逃げてるわけにはいかないのだ。ちゃんと、向き合わないと。


こんなこと言ったら、向き合ってるとは言わないって星に怒られそうだけど。でも、それがあたしの役割だから。誰に何を言われても、あたしはそうするしかない。


そして、誰にも知られてはいけない。絶対に。


昇降口で靴をはきかえ、階段を上る。場所は生徒会室、四階の一番端っこだ。


時刻は一時過ぎ。


一時から始まる課外のお陰で、廊下には生徒一人見当たらない。二階を通れば三年生の自習室があっただろうが、わざわざその前を通ろうとも思わないし。


生徒会室に人影があるのを見て入ろうとすると、横から田崎先輩、と名前を呼ばれてドアを開ける手を止めた。


「あ、やっぱり。お久しぶりです、体調戻ったみたいでよかった」

「……おかんちゃん?」

「そうです」


生徒会室の手前にある文芸部室。暖簾の隙間から顔を出した彼女の名前を口にすると、安心したように笑われた。


あの、あたしが星の家に居候することになったきっかけのオーキャンでの出来事。


そういえばこの子もいたんだっけと、今更ながらに思い出した。


「あれ、田崎来てんじゃーん」

「心奈来ないの?」

「あ、……んー、ちょっと待ってて、てか先やってて」

「あ、おかんいるのかー」

「ちょっと話してくるからさ」


はいよ、と生徒会長が生徒会室に引っ込む。手招きする心音ちゃんに文芸部室に足を踏み入れると、色んなものが雑多におかれていた。


生徒会こういう勉強会で結構来るけど、文芸部室には入ったことはない。話には聞いていたけど、なんというか文芸部、って感じだな。