「んな顔すんなよ、バレバレだぞ」
多分この子も、普段は隠しているんだろう。
そう思っての、忠告。早々見破るやつなんていないだろうけど、一応念を入れて。
こくり、と大人しく頷いた片浜さんの頭を、今度は軽く二回叩いて。様子を見守っていた柚都に視線をやると、その名前を呼んだ。
「柚都、片浜さんと連絡先交換してやって。んでついでに俺のも教えといていいから」
「ん、了解。ってことで片浜さん、……心音ちゃんって呼んでもいいかな?」
唐突に何を言い出すかと思えば。片浜さんびっくりしてんぞ。
気持ちは分からなくもねえけど。
「あ、えと、構いません、けど」
「じゃあ心音ちゃん、って呼ぶね。俺のことは柚都でいいから」
「あ、俺も俺も。心音って呼ばせてもらうぞ、適当に好きに呼んでくれ」
ついでだから便乗しておいた。苗字は正直好かない。
「じゃあ、柚都さんと、星さん……?」
「まあ初対面だし、及第点かな。ね、星」
「俺にふんのかよ。まあ徐々にでいいだろ、徐々に」
徐々にってことは次もあるってことに、心音は気付くかどうか。
気付いても気付かなくても、どっちでも大丈夫だけど。
「ほら柚都、心音が困ってんぞ」
「あ、ごめん。えと、スマホ? ガラケー?」
「残念ながらガラケーなのでLINEは無理ですね」
「先手打たれちゃったかー。じゃあメールと電話かな。心音ちゃんの教えて、そしたら俺自分のと星の送るから」
「了解しました」
自分の鞄を漁って出した手帳に、心音が空でアドレスを書いていく。メモを見ながら登録を始めた柚都を尻目に、冷蔵庫から麦茶を取り出した。
手の中のコップが、みしりと音を立てる。それに溜め息を吐きつつ、気付かれないように深呼吸。
最近見ないな、とは思っていたのだ。
心奈の話。気にしていなかったわけじゃない、けど真湖にトラブルがあって、そっちにかかりきりになってた。
あいつらのことが後回しになってたのは、言い訳のしようがない。
くそ。……なんの、ために。
打てる手は、いくつもあったはずだ。今の俺は、否この件に関しては最初から。俺は一人じゃないんだから。
────結。悪い。
一度他の奴等にも連絡を取っておくべきだな、と考える。最近見ていない顔は何も心奈に限ったことじゃない。
幸か不幸か、夏休みだ。学生からしたら、生活リズムが崩れる期間。それが俺からしたら一番怖い。
バイトはあるが、動けないわけじゃないはずだ。バイト先の店長も何となく事情は把握してるし、動きやすくはなるはず。


