勇気を出して、空を見上げて。



それでも口を挟むことはしなかった。これは一つのチャンスだ。


心奈から、ちゃんとしてほしいことを言わせるための。


けれど無言の抵抗を続ける心奈に、時間は十分、十五分と過ぎていたようで。


こんこん、と控えめに響いたノックの音に、俺は思わず舌打ちを漏らした。


「星、入るよ」

「……帰ってきてたのか」

「片浜さんには今お昼食べてもらってる。星ここいるんならこれヨーグルトとゼリーと薬。田崎さん、好きなの食べてね。後よろしく」


片浜、ってさっきの女の子か。


スポドリとその他諸々を持ってきた柚都は物を置いて言うことを言い終えるとすぐに部屋を出ていった。


なんとなく、心奈と顔を見合わせる。


柚都が入ってきたせいで、何かが切れた。それを心奈も感じていて、顔に広がる安堵の表情はきっとそのせいだ。


俺に、訊き出さないという選択肢なんてないのに。


俺には知る義務がある。知らなければ守れるものも守れない。俺は、守りたい。だから、知っておかなければならない。


それは、仁だってきっと同じことを言う。湊だって。大和さんも、恭二さんも、良輔さんも、双子も、もっと他の沢山の人達も、そして。


────結も。


だから、絶対に言ってもらう。


心奈のために、俺のために。守るために。


「……星、二人暮らししてるんだ」


心奈から飛び出した疑問に、それだけ長くこの子があの場所に行っていないことを悟った。


知らないということは、少なくとも三月上旬から入っていないということになる。もし来ていたら、仁が言わないわけがない。


基本的に、伝えるべき情報は隠さない。


それが決まりだったし、そうでなくても、隠すことであの子たちの不安に繋がってはいけないから。


「さっきの奴は、渡部柚都」

「……しって、」

「詳しいことは知らねーよ。ただ、伝えることは伝えてある。真湖のことは隠してもおけねえし。隠さないって決まりなのは、お前も知ってんだろ」

「……そうだけど」

「別にアレだけに当てはまることじゃねえ。伝えるべきことは伝える。────あいつは、こっち側だ」


はっと、心奈が目を見開いた。あの短時間じゃ、分からないのも無理はない。


それでも、大学に入る前の三月から今まで約二年強。


短いようで長い時間を、俺は柚都と一緒に過ごしてきて。分からないわけが、ない。