それでもお湯が沸くまでには時間がかかる。
今度こそどうすればいいか分からなくなって、フローリングの床に座った。
仁は、知ってんのか?
否、知ってたら多分手を打ってくる。
俺がまだあそこに行っていることを知っているはずだ。そもそも仁から言ってきた面もある。それに俺が今どこに住んでいるのかも知っているし、何よりちゃんと家がある。
それなのに、こうなっているってことは仁は知らなかったんだろう。
もしくは、心奈が意図的に避けていたか。
元々色んなところを渡り歩いていた子だ。本気で意図して避けられていたら、片手間にやっていただけじゃ見つけることなんて出来ない。
だけど、ちゃんと後輩がいることには安心した。
「────あ、」
「嗚呼、どう? 心奈」
がちゃり、と音がして、俺の部屋から女の子が出て来た。
まだ中身が入ったままの麦茶のコップをちょっと気まずそうに持って俺を見た女の子を、折り畳みだけど出しっぱなしになっているテーブルの傍に座るよう促す。
失礼します、と俺の斜め前に座った女の子にもう一度同じ問いを繰り返すと、麦茶を口に含んだ女の子は口を開いた。
「とりあえず着替えてもらって、今は横になってます。眠れないみたいだったので、薬飲んでからがいいと思って」
「ま、そんなとこか。今話しできそうか?」
「ちょっと辛そうですけど、長引かなければ大丈夫だと思います」
「見てくる。柚都戻ってくるから待っててくれ」
はい、と頷いた女の子を置いて、ノックもなしに部屋に入る。
びっくりした心奈がベッドから起き上がろうとして失敗したのを見て、俺は大きく溜め息を吐いた。
「んの、バカ」
「……るさい」
「ったく、仁に言われてんだろ」
ふつり、と心奈が押し黙る。
こういう反応が返ってくるってことは、帰ってもないし行ってもないんだろう。
一体いつからほっつき歩ってるんだ。ぶっ倒れるまで。
「どこほっつき歩いてた」
「……星には関係ない」
「心奈」
逃げるように心奈が寝返りを打つ。っち、と容赦なく舌打ちをするとその細い肩がぴくっと揺れる。
関係ないわけがない。関係なんて大有りに決まってる。
それを、心奈だって分かってるはずだ。
「……暫くどこにも行かせねーから」
「それはダメ!」
強い口調で間髪入れず、心奈が声を荒げた。
ベッドに背を預け、俺はすとんと腰を下ろす。拒絶したまま、心奈は次の言葉を口にする様子がない。


