本来なら大学の救護室に連れて行くべきなのだろうが、星の知り合いらしい。下手にことを大きくするより、星を呼んだ方がいいだろう。
大人しく地面に腰を下ろした田崎さんが、両手で顔を覆って俯く。駆け寄った片浜さんがその背中をさする。
俺もその傍らに腰を下ろすと、ポケットからスマホを取り出した。
「……もしもし、星?」
『んだよ? 帰ったんじゃねーのか?』
「田崎心奈ちゃん。熱あるっぽい、今中庭」
『っ直ぐ行くから逃がすなよ!』
即切られた電話に、二人の関係を考えた。まだよく分からない、だが今優先すべきは田崎さんだ。
俺と星の会話は聞こえていたはずなのに、もう抵抗しない田崎さんはしないというよりできないのか。
片浜さんはぎゅっと眉を寄せて田崎さんを見つめていて、どこか自分を責めているように俺には見えた。
それが、気になる。
どうしてなのだろう。やっぱりさっき感じた何か、が原因なのか。
そうやって今目の前より、他の子が気になってしまうのは俺の悪い癖なんだけれど。
どうしてか、放っておけない気がした。
「……貧血かな? 治まった?」
「き、もちわるい……」
「あ、私エチケット袋持ってます!」
「それ渡してあげて」
声を上げた片浜さんに指示を出す。リュックを漁って簡易的なエチケット袋を広げて出した彼女が田崎さんの口元にそれを持って行った。
眉をぎゅっと寄せ、目を閉じる田崎さんは吐き気を我慢しているのだろう。知り合いらしい片浜さんだけならともかく知らない俺がいるところで我慢しないでというのも無理な気がして、下手に声は掛けないでおく。
この際なんで持っているのかは訊いている場合ではない。
「柚都っ」
「星、うち連れて帰っていい?」
すぐに来た星は俺たちを見つけると木の間をすり抜けて駆けてきた。
田崎さんの肩に手を置いたまま、星を見上げて問いかける。大きく頷いた星は、寧ろ頼む、と口を開いた。
「心奈、姫抱きか背中」
「せ、なか……」
「荷物持ちます」
「頼む」
星が軽々と田崎さんを背負う。田崎さんの荷物を持って、片浜さんが俺を見上げる。
行こう、と声をかけて、俺たちは俺と星の住むアパートへ向かった。


