勇気を出して、空を見上げて。


正直健気だと思う。


「でもまあ、」


俺の声に顔を上げ、ページをめくっていた手を止めた。


「違うのは教科書とかプリント、ノート持込み可の試験があることかな。中高はダメでしょ?」

「中学は、完全にダメでしたね。いいって言われたことないです。高校もまだ一回しか受けてませんけど、いいって聞いたことないですね……」

「うん。科目にもよるけど、持込み可の科目も意外と多いんだよ。だからそこまで心配しなくても多分大丈夫」

「そこ、多分なんですか?」

「あとは片浜さんの頑張り次第、かな」


なんだそれ、というように片浜さんが笑った。ぱたりと閉じて差し出されたファイルを受け取り、机の中に適当に仕舞う。


他は、と問いかけると、少し言い澱んでから問いを口にした。


「……寮、とか」

「あ、うん。一応あるよ。ちょっと待ってね……あった、これ」


脳内検索をかけるまでもなく引っかかった単語に、学部向けのパンフレットを引き寄せてぺらぺらとめくった。確か載っていたはずで、記憶通りに小さいながらも後ろの方に書いてあったのを見やすいように向きを変えて渡す。


「寮希望?」

「できたら入りたいな、と。いかんせん自宅から駅までが遠くて」

「実家、どこ? 俺分かるか微妙だけど……」


一応同県出身だけど、端っこの方だし。どちらかというと隣の県の方が近いというか、県境に住んでいた。


最初に言われた地名は分からない。その次に言われた最寄駅も、掠める程度でとてもじゃないが分かったものじゃない。


三回目に言い直してくれた平野には記憶があって、安心しつつ嗚呼、と頷いた。


「そこなら一応何となく……社会で出て来たような」

「あ、多分あってます」

「海沿いなの?」

「そうですね、といっても住んでる町からしたら内陸の方ですけど。高校までチャリで四十分ですね」

「四十分!? それはまた……」

「駅なくて。自宅からの最寄駅がイコールで学校の最寄駅なんで」


とてもじゃないけど考えられない。走ろうとすればいけるかもしれないけど、考えたことなかったって方が正しい。


「ていうか俺、高校知ってる。何人かここ来てるよね?」

「ご存知でしたか? 何人かまでは覚えてないんですけど……」

「知ってる知ってる。この学部にはいないかな……」


全員を知ってるわけじゃないから何とも言えない。他の学年とか、他学部にならいた気がする。二、三人。


それにそういえば教授が行ったことあるって言ってた気がするなあ。高校生初々しかった、とか言ってた記憶がある。


「SSHだっけ? なんかやってるよね」

「やってますよ。私も一応そうなので」