勇気を出して、空を見上げて。


「星ってうまいよね」

「は?」

「いや、立ち回りが」

「嗚呼、……どやあ」

「今日の夕食キャベツの千切りだけね。ドレッシングの許可はしない」

「正直悪かったと思ってる」


笑顔で冷たく言い放つと真顔で星が謝ってきた。


ぶっと吹き出してしないけどね、と打ち消す。わーってら、と返す星もちゃんとおふざけだって理解はしてる。


「まあ自分で作ればいい話だけど」

「それはやだ。今日俺当番じゃねーもん」

「わがままだなあ」

「上等。……あ、明日真湖連れてきてもいいか?」

「全然いいよ。そっか、あの子も夏休みか」


おう、と優しそうに笑うのはきっと真湖ちゃんのことを考えてるから。


でもその顔がふと陰る。


声をかけようとして、結局やめる。初めてじゃない。今まで何回もあって、何度も声をかけようとして、だけどかけちゃいけないと思ってかけたことはなかった。


何かあったらきっと言ってくれる。そう信じて。


自分から訊きに行って、拒絶されたら辛いから。


「ごめんお待たせ、渡部くん」

「……牧野先生は?」

「あー……多分そろそろ来ると思う。まだ会場の方にいるんじゃないかな」

「だって星」

「うぃ」


教室に着いて指定された席に座っていると、俺とペアの先生が来た。


星とペアの先生はまだ、らしい。


時間は十一時ちょうど。そろそろばらけて来る頃だ。


入口で用紙に幾つか記入事項を書き込んでもらって、それから順番に受付担当が案内してくれる。


全部で八か所。奥から一番、向かいが二番というように番号で管理している。


俺と星が隣同士で六番と八番。なんだけど。


入口から受付担当の後輩が顔を覗かせてきていて、後ろにちらっと高校生の姿が見える。


これは、思ったよりも早かったな。


「なあ柚都」

「うん?」

「先生来ねえんだけど」

「おかしいなあ……どうしよう、一つなしにしてもらう?」


それでも、別にいいかもしれない。でも一つ減ると周りの負担は増えるし一気に受け入れられる数も減るし。


「石田先生、星と六番やってください。俺一人で八番やります」

「……大丈夫?」