その狭い部室の中、揃っている物品は意外と多い。
水道は備え付け、机は一つとそれを囲む椅子が五つ、生徒会室とは反対側の壁に机の一辺がくっつけられている。
生徒会室側にはパイプ椅子が三つ、一番奥には教室にあるような普通の机が一つ。
机の向こうの壁には大きなスチール棚があり、歴代の先輩達の原稿は勿論、ミスプリのため裏紙と化している紙の束、そして何故かトランプが三組とオセロと漫画が何冊か。
一番謎なのは、そのスチール棚の隣に置いてある冷蔵庫だろう。しかも冷凍室付きと性能もいい。
冷蔵庫の上にはむーみんと呼ばれている扇風機があって、流石に物置だったためにエアコンは設備されていないので夏はこれを回して乗り切ることになっている。
このむーみんも古すぎてそのうち壊れないんじゃないかと心配になるが。
「冷蔵庫って本当にあったんだ……」
「あーそれ昔生徒会で使ってたとか先輩が言ってたよね」
「そういえば? 確かいわく付きなんだっけ」
「いわく付き?」
「冷凍庫にドリアン放り込んであって開けられなくなったらしいよ。昔の先輩が。そんで、それを何代か前の文芸の先輩がドリアンごと冷蔵庫貰ってきて、その後の先輩がドリアン救出して今に至るらしい」
どうしてドリアンを入れたのかが甚だ謎だ。
へー、と微妙な顔をした詩月がご飯を口に放り込んだ。確かにどうにもコメントのし辛い話ではある。
というか、ツッコミ所満載過ぎて逆にツッコめないというか。
多分後者の方が正しい。
「でも便利だよね、冷蔵庫」
「飲み物冷やしとけるしねー」
「アイスも保存可能だしね」
「まさか買ってきたのかしーふ!?」
得意そうな顔をして笑ったしーふにさっちーが即座に反応した。どやあ、と自分で言いながら冷凍庫を開けてカップのアイスを取り出している。
この二人は同じ塾なので、意外と仲が良い。それを言ったら同じ塾の中等部に詩月もいたらしいが。
詩月は今は塾をやめている。
「あたしにも買ってきてよ!」
「やだよ金ねーもん」
「お金あげるからー!」
「今から行けるか」
「諦めなさっちー」
「えーじゃあ来週買うー」
「来週なのね」
「来週なら午後空きだから」
今週はみっちりあるもんな。
午後の課外は一時から。今週は数学だ。


